
郊外のマンションに引っ越して数ヶ月が経った。
新しい環境に少しずつ慣れてきた私たち家族。子どもたちも近所の友達と遊ぶようになり、私も少しホッとしていた。そんなある日、友人から聞いた話が気になり始めた。
彼女の家は、夫の実家から譲り受けた土地に建てたもので、設計や内装に満足しているという。特に、長女が小学校に入学した年に、次女が幼稚園に通うようになり、家族全体が新たなスタートを切ったのだ。
ある秋の午後、私が子どもたちの宿題を見ていると、次女がそっと近づいてきた。
「ママ、赤ちゃんの声がする!」
驚いて耳を澄ますが、何も聞こえない。後ろにいた長女も不思議そうな顔をしている。
「どこの赤ちゃん?」
「パパの部屋からだよ!」
夫の書斎に行くと、確かに赤ちゃんの泣き声が聞こえる。マンションの外から響いてくると思い込んでいたが、声は確かに近い。
「もしかして、近所の赤ちゃんが生まれたのかもね。」
そう言いながら、私は窓を開けた。秋の風が心地よく、外の景色は静かだ。
数ヶ月後、朝の掃除中に再び泣き声を聞いた。
「またか…」
窓は閉まっている。数週間前に聞いたときと同じような赤ん坊の声だ。気味が悪くなり、掃除を急いで済ませた。
その後、週末の午後、書斎で遊んでいた子どもたちが突然怯えた顔で私の元へ駆け寄ってきた。
「赤ちゃんの声がする!」
「今は聞こえないけど、パパの部屋にいたときは聞こえたの?」
夫が書斎に入ると、驚愕の表情で振り返った。
「本当に聞こえる。」
私は不安を感じ、子どもたちを抱きしめた。
「大丈夫、きっと近所の赤ちゃんだよ。」
しかし、夫の顔は青ざめていた。
その日以降、夫は徐々に書斎にこもるようになり、週末も帰ってこないことが増えた。
年末、私たち家族は実家に帰ることになり、夫は「仕事が忙しいから行けない」と言い出した。
「また書斎にいるの?」
「うん、忙しいから。」
私と子どもたちが実家に帰った後、夫は書斎に閉じこもったまま、食事も取らず、誰とも話さない日々が続いた。
数日後、私は嫌な予感を抱いて家に戻った。
暗い部屋の中、夫の姿が見えない。
「パパ?」
書斎の襖から微かに声が聞こえる。近づくと、夫は赤ちゃんを抱くような仕草をしていた。
「何してるの、パパ?」
「かわいい赤ちゃんがいるんだ。」
「赤ちゃんなんていないよ!」
子どもたちが怯え始め、赤ちゃんの泣き声が部屋に響く。私は恐怖に駆られ、子どもたちを守りながら書斎から逃げ出した。
「今日はおじいちゃんのところに行こう。」
後日談:
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