
古びたアパートの屋根裏で、若い女性がひっそりと腰を下ろしていた。寒さが身に染みる冬の深夜、彼女は何かに引き寄せられるように、古いオルゴールの音色に耳を澄ませた。すると、音もなく屋根裏の隅から、長い影が彼女の方へと伸びてくるのが見えた。
その影は、ゆっくりと彼女に近づき、触れるか触れないかの距離で止まった。女性はその影に魅了されるように、立ち上がり、無意識に影の方へと歩み寄った。彼女の心臓は高鳴り、背筋が凍る思いだったが、どうしても足を止めることができなかった。
影が彼女の腕を優しく掴むと、彼女はそのまま影の中へと引き込まれていった。しばらくして、何事もなかったかのように彼女が再び屋根裏に現れた時、彼女の手には古びたオルゴールが握られていた。
そのオルゴールは、彼女の口からこぼれ出るように、内臓のようなものを吐き出し始めた。金属的な音と共に、無数の小さな部品が彼女の周りに散らばっていく。
やがて、朝日が差し込む頃、屋根裏の静寂を破るように赤ん坊の泣き声が響き渡った。彼女はその声に応えるように、優しい微笑みを浮かべた。影の正体を知っている彼女は、その瞬間、自分が何を引き寄せたのかを理解していた。屋根裏の奥で待つ父の声が、今も彼女の耳に残っている。「お前が来るのを待っていたよ」と。
そのオルゴールは、父からの贈り物だった。彼女はその音色を、決して忘れることはないだろう。なぜなら、彼女が求めていたのは、決して愛ではなかったからだ。
屋根裏には、今も影が潜んでいる。彼女の中に生まれた新たな存在と共に。
彼女は、もう戻れない。
その影は、彼女自身だったのだから。
彼女が求めたのは、闇の中の真実だったのだ。
そして、彼女はその真実を受け入れた。
あの日、屋根裏で見た影の正体を。
彼女は、誰かを待っている。
影と共に。
そして、彼女の声が響く。「戻ってきて、私を連れて行って。」
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