
彼女は友人と共に、寒い冬の夜に街の古びたアパートメントに迷い込んだ。その日は積もる雪が街を静かに覆い、彼女たちは冷えた身体を温めるために酒を求めていた。酔った勢いで見知らぬ男性と話し込み、気がつけば彼の部屋にいた。二日酔いで重い頭を抱えながら、彼女は昨夜のことを思い出そうとした。
最初は楽しかった酒の席も、次第に曖昧な記憶へと変わり、心の中に不安が広がった。頼んだのは彼女自身だったが、初めて会った男の家に泊まることに対しての恐怖感がじわじわと襲ってきた。彼女はお礼を言って帰ろうとしたが、そこで不気味な声が耳に入った。
それは遠くから響く赤ちゃんの泣き声だった。おんぎゃーおんぎゃーと、明らかに異常なボリュームで泣いている。二日酔いの頭痛が増す中、彼女はその声の出所を探し始めた。部屋中を探し回り、ついに目にしたのは押し入れだった。
眠気も手伝い、無意識に手を伸ばそうとしたその瞬間、彼女は男に止められた。「そんなわけない」と彼は言い、押し入れを開けようとした。彼女の心臓は高鳴り、恐怖が全身を駆け巡る。すると、赤ちゃんの泣き声は突然止まった。
男が押し入れを開けると、彼女は目の前に展開された光景に悲鳴を上げた。そこには赤ちゃんを抱えた女性が、真っ赤な包丁を手にしていた。彼女は男の周りをぐるぐると回り、彼女を一瞥した後、赤ちゃんと共に煙のように消えてしまった。
彼女は恐怖に駆られ、急いでその場を離れた。逃げるようにアパートを飛び出し、彼とは二度と連絡を取らなかった。酔って泊めてもらったのに、彼に対して酷い女と思われたかもしれない。しかし、あの押し入れの中から出てきたものには関わりたくなかった。彼には何も記憶がないようだったが、彼女はその奇妙な関係について今も考え続けている。あの夜の恐怖は、決して忘れられないものとなった。彼女は、あの押し入れの奥に何が隠されていたのか、今も謎のままである。
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