
最近、ふと思い立ち、子供の頃に過ごした古びた団地に行ってみた。引っ越してからは一度も戻っていなかったが、20年近くの年月が経てば、風景も様変わりしているに違いない。
懐かしさと共に新しい感覚が交錯しながら歩いていると、ふと目に留まったのは、かつての家の隣にある、誰も住んでいないような古びた家だった。周囲は現代的な外観の建物ばかりで、異様な雰囲気を醸し出している。
「なんでこんなところに来たんだろう…」と不思議に思いながら、元来た道を戻ることにした。しかし、何度も同じ道を辿るのに、いつの間にかその家の前に立っていた。恐怖がじわじわと胸を締め付ける。
四度目の試みでようやく背を向けたその瞬間、後ろから「カラカラ」と引き戸が開く音がした。振り返ると、その家の中から「おい、健太、どうした?」という声が響いてきた。
それは幼馴染の声だった。あの子は今でもここに住んでいると思った瞬間、恐怖が一瞬消えた。しかし、すぐに冷静になった。彼女は20年前、事故で亡くなったのだ。
「健太、遊びに来てくれたの?」
耳元でその声がささやき、私は恐怖に駆られた。人違いだと叫び、背を向けて全力で逃げ出した。あの団地には、それ以来決して近寄っていない。あの声がまだ耳に残っているのだ。今も耳元で響いているような気がする。あの家には、何かがいるのかもしれない。もう振り返らないと決めている。彼女は帰ってこないのだから。
それからも、あの声は夢の中で繰り返し響くのだった。私の心に、永遠に残る恐怖の記憶として。
そして、私の中の何かが、彼女を呼び続けているのかもしれない。
あの家には、忘れられた思い出が封じ込められているのだ。
もう、二度と戻れない場所として。
それでも時折、夢の中で彼女の声が聞こえる。
「健太、遊びに来てくれたの?」
もう、戻れないと言っているのに。
この声は、決して忘れられない。
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