
あの日、俺はマンションの自室でテレビをつけたまま、泥のように眠りこけてしまった。
ふと、意識の底から引きずり出されるように目が覚めた。耳に飛び込んできたのは、テレビから流れる複数の男女のざわめき。重い瞼をこじ開けて画面を盗み見ると、薄暗い画面の中、男女数人が夜の古びた寺のような場所に座り込んでいた。
「何かの心霊特番か……」
気味が悪くなり、すぐに消そうと思った。しかし、身体がひどく重く、リモコンへ手を伸ばすのが億劫だった。画面の中では、一人の若い男が、周囲をねめつけながら低く張り詰めた声で語り始めた。
「これから俺が話す話は、マジで一番ヤバいからな。全員、覚悟しろよ」
男が語ったのは、彼らが通う高校にまつわる、おぞましい「人柱」の怪談だった。
その高校の校舎が建てられる際、土地の因縁を鎮めるためか、一人の若い、美しい女性が人柱に選ばれたのだという。彼女は生きたまま、人間の尊厳を徹底的に踏みにじるような、聞くに堪えない凄惨な方法でなぶり殺され、暗い土底へ無惨に埋められた。
呪いはすぐに始まった。
校舎が完成した直後から、当時の工事関係者や学校の経営陣が、次々と奇妙な死を遂げていった。ある者は突発的な奇病に侵され、ある者は五体をバラバラに損壊する原因不明の事故に遭い、またある者は何者かに惨殺された。
そして、死を目前にした彼らは皆、狂ったように同じ言葉をうわ言で繰り返したという。
「あの女が来た。あの女が、俺を連れにきた」
男の語りは異様なほど真に迫っていた。単なる作り話とは思えないリアリティと、生々しい悪意が部屋の空気まで冷やしていく。
「そしてな……この話を聞いちまった奴のところには、3日以内にその殺された女がやって来るんだよ」
画面の中の男女は、男も含め、いつの間にか全員がガタガタと歯の根を鳴らして震えていた。演出とは思えない本物の恐怖が、画面越しに俺の肌にも伝染してくる。その時、一人の少女がひきつった声をあげ、闇の奥を指さした。
「……ねえ、ちょっと待って。あれ何……? 何がいるの……!?」
彼女の指の先、寺の薄暗い御堂の隅に、ゆらりと「女のような黒い影」が佇んでいた。
「いやああああっ!!」
鼓膜を突き刺すような悲鳴。立ち上がる椅子がひっくり返る音。
後日談:
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