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お題 中編
退職代行
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お題 中編

退職代行

1ヶ月前
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夜明け前、震える指で退職代行に電話した。喉が詰まって社名すら言えない俺に、受話器の向こうの女は名乗りもせず、やけに明るい声で言った。

「大丈夫。あなた、優しすぎるだけ。辞めるって言えない人、私が一番得意なんです」

会社名と部署を伝えると、女はすぐ復唱した。言い方が妙に親しい。

「うん、そこね。上司△△、ね。今までよく耐えたね」

“よく耐えた”なんて、初対面の相手が言う言葉じゃない。けれど、その優しさに縋りたかった。

手続きのために、と本人確認を求められた。住所、勤務先、緊急連絡先。免許証の写真も。休職診断書の画像も。

「送って。あなたを守るために必要」

守る。救いの単語が、俺の判断を鈍らせた。

その日の午前、会社からの電話が止まった。昼には郵便受けに社員証と社章が入っていた。女は淡々と報告する。

「連絡完了。退職届提出済み。私物回収も手配した」

早すぎる。ありがたいはずなのに、胸の奥が冷える。

夜、同僚からメッセージが来た。

『お前、急に何?“二度と連絡するな”って…』

俺は送っていない。続けて母からも。

『あんた、誰かに脅されてるの?女の人から電話が…』

背中が冷たくなった。

慌てて代行に掛け直すと、女は機嫌よく笑った。

「周り、うるさいでしょ。あなたが弱ってるときに“本当のこと”言える人って、少ないの。だから私が整理したの」

「整理って何だよ」

「あなたの味方以外を、遠ざけただけ」

俺のスマホが勝手に鳴った。非通知。出ると女の声だった。通話は繋がっていないはずなのに。

「ねえ、上司に言ったよ。“あなた、恋人が迎えに行くから”って」

「恋人?」

「うん。私」

耳鳴りがした。あの時、本人確認で送った免許証。住所。緊急連絡先。署名欄がある委任状のPDFも、女に言われるまま書いて送った。

「代行の範囲だろ。会社とやりとりするための――」

「そう。だから、会社の書類、ぜんぶ私に届く。あなたの退職金の振込先も、変更できる。だって“あなたが望んだ”って形にできるから」

さらりと言う声が、恋の熱と事務の冷たさを同時に持っていた。

玄関のインターホンが鳴った。画面に、黒いコートの女。花束を抱えている。

「お疲れさま。もう会社に行かなくていいよ」

ドア越しに、甘い声が響く。

「あなた、逃げ癖あるから。退職は成功。でも次はね――人間関係から辞めよう。私だけ残せば、楽になる」

スマホに新しい通知が来た。

『緊急連絡先:***(彼女)に変更しました』

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はじめまして、よろしくお願いします。

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