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お題 中編
マガマガオンナ
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マガマガオンナ

11時間前
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この町には、口に出してはいけない名前がある。

「マガマガオンナ」。

小学生の頃、同級生がふざけて言った瞬間に保健室へ運ばれた。

理由は、喉の奥が“煤(すす)みたいに黒く”なって、声が出なくなったからだという。

大人は笑って否定した。

ただ、否定の仕方が妙に揃っていた。

「そんなもの、いるわけない」

「でも言わないほうがいい」

「絶対に、夜は言うな」

大学の春休み、僕は地元に戻ってきた。

駅前の古いアパートに、同級生のユウタがまだ住んでいた。

「おまえ、覚えてるか。マガマガオンナ」

ユウタが缶ビールを置きながら言った。

その声が、少し掠れていた。

「やめろよ。縁起でもない」

「縁起っていうかさ……今、変なことが起きてる」

ユウタはスマホを見せた。

録音アプリの波形が、まるで針金みたいに細く伸びている。

「これ、夜中に勝手に録れてた音」

再生すると――最初は風の音だけだった。

でも、途中から“何か”が混じる。

ぬる、とした湿った呼吸。

粘る舌の音。

そして、女の声。

……まが……まが……

背中の皮膚が、冷たい指で撫でられたみたいに総毛立った。

「おまえ、言ったのか?」

「言ってない。……でも、聞いた」

ユウタは言った。

「夜の公園で、誰かが“言ってる”のを」

その夜、僕らは駅裏の小さな公園へ行った。

遊具の塗装は剥げ、ブランコは鎖が鳴るだけで誰もいない。

街灯がひとつ切れていて、暗い隅ができていた。

その暗がりの中に、黒い塊みたいなものが座っている。

最初はゴミ袋だと思った。

でも、それは――

髪だった。

地面に広がるほど長い髪の束の中心に、誰かがしゃがんでいる。

ユウタが小声で言った。

「……あれだ」

その瞬間、暗がりの“塊”がゆっくり顔を上げた。

顔が、見えない。

髪がカーテンみたいに垂れていて、肌が覗かない。

でも、口だけが――口だけが妙に白く見えた。

そして、笑った。

唇が裂けるほど横に広がり、歯がずらりと並ぶ。

その歯の隙間から、黒いものが糸を引いて垂れた。

女が、喉の奥で何かを転がすみたいに言った。

「きこえた……きこえた……」

僕は息を止めた。

ユウタが後ずさる。

ブランコが、キィ……と揺れた。

誰も触っていないのに。

女が続けた。

「よんだ……よね……?」

僕らは首を横に振った。

声を出したら終わる気がした。

女の髪が、ずるり、と地面を這う。

まるで生き物みたいに、僕らの足元へ伸びてくる。

ユウタの靴に触れた瞬間、ユウタが堪えきれず叫んだ。

「呼んでない!! 呼んでないって!!」

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後日談:

  • すみません、創作です。映画観たいと思います!
アバター 001_001

はじめまして、よろしくお願いします。

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