
私が大学生だった頃のこと。友人たちと語り合った帰り道、ふと気になった廃ビルに立ち寄ることにした。冬の夜、外は冷え込み、静寂が広がっていた。
そのビルは昔、人気のあったラブホテルだったらしいが、今では誰も近寄らない廃墟と化していた。友人たちと一緒に中に入ってみると、薄暗い廊下に古びた壁紙が剥がれかけ、所々に不気味な影が映っていた。好奇心から、ひと部屋だけ開いている部屋に入ることにした。
部屋の中は、円形のベッドがあり、時代遅れの家具が並んでいた。少し不気味ながらも、何かワクワクするような気持ちになり、友人たちと笑いながら過ごしていた。しかし、徐々に不安が募ってきた。誰もいないはずの廊下から、時折聞こえてくる電話の音。
「まさか、誰かいるのか?」友人の一人が言った。その瞬間、部屋に置かれた古い電話が鳴り始めた。私たちは驚きながらも、興味本位で受話器を取った。すると、耳元に響く女性の低い声が聞こえた。
「助けて…」それは明確な声だった。恐怖に駆られた私たちは、すぐに電話を切った。しかし、電話は再び鳴り響き、今度は笑い声が聞こえてきた。「うひゃひゃひゃ…」その声は背筋を凍らせるほど不気味だった。
一人が「出よう」と言い出し、私たちは急いで部屋を出た。しかし、廊下には誰もいないのに、足音が聞こえる。さらに、ドアを叩く音が響いてくる。「バンバンバン!」という音が心臓に響く。
急いでビルを抜け出し、外に出ると一瞬の静寂が訪れた。その時、再び電話の音が聞こえた。振り返ると、ビルの窓から何かがこちらを見ていた。「もっと…」という声が風に乗って聞こえ、恐怖に駆られた私たちは、急いでその場を離れた。
数日後、友人たちとそのビルの前を通ると、すでに取り壊されていることが分かった。幽霊の噂や心霊現象について調べたが、誰もそのビルについては触れていなかった。ただ、私たちの中に残った恐怖だけが、今でも時折思い出される。あの時の出来事は、笑い話として語るにはあまりにも重すぎる。
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