私が小学生の頃、実家は二世帯住宅でした。玄関は一つで、一階が祖父母の家、二階が私の家族の住まいになっていました。一階の部屋へ入れるドアと引き戸は基本的に施錠されていて、祖父母が来た時にしか開けられません。 そんなある夏の夜、父は仕事で家にいず、私は母と弟が寝ている横で中々寝付けなかったのでテレビを何となく観ていました。確かプロレスか何かが放送されていた様に思います。 すると、一階で足音が聞こえてきたのです。最初は幻聴かと思いましたが、テレビを消して耳を澄ますと、確かに二人分の軽い足音がトットットットッ……と追いかけっこをしている。 母を起こすも、その日は気のせいだという事で奇妙に思いながらも気付いたら寝ていました。 1ヶ月程経ち、私、父母、弟で夕飯を食べている時の事です。今度は全員が足音を聞きました。確かに一階に誰かがいる様な足音、それも変わらず二人分が追いかけっこをしている。 父、包丁を持った母が一階へ向かい、家の周りも見回って来ましたが異常はありませんでした。 それ以来、謎の足音は頻繁に聞こえる様になりました。 母が昼間に一人でうとうとしていると、一階からゆっくり階段を上がる足音が聞こえたと言い、階段を見に行くと足音は止み、そして部屋へ戻ると何故か一段目から再びゆっくりと登り始めるそうなのです。 他にも、家族で食事をしていると、家の周りに敷かれた砂利を歩くジャッ……ジャッ……という足音。しかし不思議な事に、足音は確かに前進する時の音なのですが、発生源は一定の場所から動かないのです。窓から見下ろすと音は止み、やはり何もいませんでした。 動物の侵入を疑い、祖父母が来た際に一階を覗いてみましたが、糞尿や体毛といった痕跡は無く、家具や壁紙に損傷もありません。 それから更に月日が流れ、私は家族で木造二階建のアパートへ引っ越しました。我が家は一階、直上には母と子、二人の母子家庭が住んでいました。 暫くして、その直上の家庭が引っ越して空き部屋になると、またおかしな足音が聞こえ始めました。二人分の小さな足音が、家族のいる部屋の真上で延々とぐるぐる回り続けているのです。リビングで食事をしていれば上の階のリビング、寝室へ寝に行けば寝室までトットットットッとついて来てぐるぐると追いかけっこを続けていました。 ある日、まだ小学生だった私は、動物でもいるのではないかと思い、無断で直上の部屋を見に行きました。 施錠はされていず