
冬のある夜、僕は家族と一緒に山奥の温泉宿に泊まっていた。僕は高校生で、妹はまだ2歳。宿には温泉があり、家族でのんびり過ごすのが楽しみだった。
その晩、夕食を終えた後、妹が急に「遊びたい!」と言い出した。母は「じゃあ、2階の遊び場に行っておいで」と言った。
妹は元気よく走り去り、僕は食後の片付けをしてから後を追った。2階に着くと、妹は遊び場の一角にある小さな隠し部屋に入っていった。中にはおもちゃが散らばっていて、妹はすぐに遊び始めた。
「おい、何してるの?」と声をかけると、妹は振り返り、ニコニコしながら「お友達と遊んでるの!」と答えた。声のトーンがいつもと違うことに気づいた僕は、少し不安になった。
その時、妹が言った。「あ、ほら、あそこにいるよ!」と何かを指さす。ふと目を向けた先には、誰もいない壁があるだけだった。「誰もいないじゃん」と言うと、妹は不思議そうに「いるよ、見えないの?」と答えた。
何気なく「お友達は誰?」と尋ねると、妹は「お友達は優しいよ!」と笑顔で言った。しかし、そんな彼女の言葉に背筋が寒くなった。僕はそのまま立ち尽くし、何を言ったらいいのかわからなかった。
「今日は遊べないからバイバイって言ってきて」と、母の声が頭に浮かんだ。僕は意を決して妹に「今日は遊べないから、バイバイして」と言った。
妹は「え〜、でも楽しいんだもん」と言いつつ、無邪気に手を振って何かに向かって「バイバイ!」と叫んだ。すると、妹の表情が急に真剣になり、「また遊ぼうね」と言った。
その時、何かが僕の心に引っかかった。妹はその後、隠し部屋に入ったまま遊ぶことはなかった。翌朝、家族全員で宿を出る際、妹はその隠し部屋に向かって振り返り、何も言わずに出発した。
今思い返すと、あの夜の出来事はただの子供の遊びではなかったのかもしれない。あの隠し部屋には、誰かが確かにいたのだろうか。特に冬の寒さが厳しいこの時期、何かが宿の中に潜んでいるように感じてならなかった。特に妹が遊んでいたその場所は、今でも不気味に思い出される。
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