
長編
生霊の女性
続き期待 3日前
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ね。」
???
合わなかった?
何を言われてるのか分からなかった。
「霊って、自分と波長の合う人間に見えたり聞こえたりする。あんたがあの女の人を見えなかったのは波長が合わなかったからなんだろうね。」
ああ、なるほど。
そういう意味か。
俺の母は子供の頃から心霊体験を何度かしているらしい。
霊感もそこそこ強いんだと思う。
「何も感じなかったんだけどね。」
母はそう言う。
部屋の内覧をしたとき、家賃の安さは気になったものの、不穏な空気は無かったと言う。
対して、俺は霊感というものが全く無かったので、何も感じ取れなかった。
いや、あの夜感じた寒気を体験しているなら、多少は霊感があると言って良いのだろうか?
とはいえ、結局、霊の姿は見ず終いだ。
「死んだ霊じゃない。生霊だったね。何に執着しているのか分からないけど、あの部屋か、或いはあの部屋に住んでいた人か。ずっと監視しているようだったね。」
生霊。
生きている人間の念、だそうだ。
幽霊とはまた違うのだろうか?俺には詳しくは分からなかったが、母曰く、生霊らしい。
それから、2年が過ぎた。
残念ながら、2年間、ずっとアルバイトをしている。
自分の道は見つからないままだ。…と言えばカッコイイが、正直、社員となって何かの責任を負うのが怖いだけだ。
ぼんやりとした毎日を過ごしているようだった。
ずっと晴れない霧の中を歩いている感覚。どちらへ進むか判断しようにも先が見えない。
ふと、帰り道の途中で通りかかったマンションを見上げた。
ああ、2年前、変なことがあったな。
そう思い出した。
見上げた視線の先で、5〜6歳くらいの男の子がバルコニーのような吹き抜けになっているマンションの廊下を走り回っているのが外から見えた。
もう21時くらいなんだけどな。
まだ小さい子が起きてるんだ。
そんなことを考えた直後、何故かゾワッとした。
説明はできない。
嫌な予感がした。それだけだ。
そのマンションに入る住人がいたので、エントランスのオートロックをその住人が入るタイミングで一緒に入った。
さっきの男の子が遊んでいた位置。
確か、4階のあたりか?向かってみた。
「すごいな。」
マンション吹き抜けの廊下、中央に桜の樹だろうか?大きな樹が立派にそびえ立っていた。
こんな立派な樹を内包しているマンションが都内にあるとは驚きだ。
いたいた。さっきの男の子…
!!!
落ち
後日談:
- ちなみに今はきちんと会社員として生活しています。 IT系企業です。 ITの知識を一生懸命勉強して、なんとか会社員として採用されました。 一度、死にかけたような怪我をしたことが原因か分からないですが、「生きていなければ、何も選ぶことはできないな。」という考えが芽生えたのがきっかけで、自分で選択肢を探るようになったような気がします。 恐怖体験ではありましたが、自分の考えが良い方向に変わることができたのは良かったかもしれません。
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- 自分の事のようにドキドキして拝読。二人とも死ななくて良かったです。死んでしまってもただの事故で済まされてたから…匿名
- 大作だったけど結局女と子供の正体は分からず仕舞いか残念菜々氏