
長編
生霊の女性
続き期待 3日前
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けだ。
部屋に入ってしまえば、そんな雰囲気は一切感じられなかった。
その日もそんな錯覚を感じながら、ドアを開けてみた。
「ただいまー。帰りましたよっと。」
当然、誰も答えるはずはない。
それでも試しに声をかけてみた。
返事は無かった。
違和感その2、長い髪の毛がたまに落ちている。
最初はたまに遊びに来る母親のものだと思っていた。
うえぇ、なんだ?これ?
そう思いながら、「それ」をつまみ上げる。
風呂掃除をしているときに、排水溝に長い髪の毛が絡まっていた。
そう、ありえない。
母親はこの部屋の風呂を使ったことがない。
ちなみに俺の髪の毛はこんなに長くはない。
あー、あー。なんとなく見えてきた。
安い家賃、人が居るような違和感、髪の毛。
「ひょっとして、この部屋って事故物件なんじゃ…?」
そんな独り言がポロッと出た。
その直後ーーーー
「クスッ」
バッ!っと慌てて後を振り向いた。
女性の笑い声が聞こえた気がしたが、後には誰も居なかった。
風呂場は廊下に面しており、背後は狭い廊下。
廊下は暗く佇んでいるだけで、何も居なかった。
とはいえ、今のところ霊を見ているわけではない。
体調が悪くなったわけでもない。
変な思想に囚われたわけでもない。
そこで一つの実験をしてみようと思った。
そうだ、友達を泊めてみよう。
今考えれば、酷い話だ。
正常な思考の持ち主であれば、大家あたりに事故物件か確認するのが先だろう。
しかし、当時世間知らずの俺が、まず頭に思いついたのが、「自分以外の人も違和感を感じるだろうか?」ということだった。
母親はたまに来るが、すぐに帰ってしまう。
泊まっていかないか?とか、もう少し居てくれないか?と言うのはなんだか甘えているみたいでかっこ悪いと思った。
だから、友達を泊めて確かめることにした。
近くに住んでいた小中学校が一緒だった友達を呼んだ。
「初めて友達を家に呼ぶよ。散らかってるけど、まあ気にしないで。」
そう言ってドアの鍵を開ける。
友人はふと不思議な顔をした。
「あれ?誰かいんの?」
鍵を開ける手を止めて友人へと振り返った。
「なんで、そう思った?」
すると友人はクイッと顎で部屋を指し示しながら、
「いや、だって、電気ついてね?窓、明るいじゃん。」
え!?と思って窓を見る。
蛍光灯ではない、豆電球でも部屋でつけているのか、という光源の灯りが中で見えた
後日談:
- ちなみに今はきちんと会社員として生活しています。 IT系企業です。 ITの知識を一生懸命勉強して、なんとか会社員として採用されました。 一度、死にかけたような怪我をしたことが原因か分からないですが、「生きていなければ、何も選ぶことはできないな。」という考えが芽生えたのがきっかけで、自分で選択肢を探るようになったような気がします。 恐怖体験ではありましたが、自分の考えが良い方向に変わることができたのは良かったかもしれません。
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- 自分の事のようにドキドキして拝読。二人とも死ななくて良かったです。死んでしまってもただの事故で済まされてたから…匿名
- 大作だったけど結局女と子供の正体は分からず仕舞いか残念菜々氏