
短編
死にたくなかった…
ソラン 2日前
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私が10才の頃、家族3人であるホテルに宿泊しました。兄、母、私。
ダブルの部屋に、エキストラベッドを入れてもらい、3人同じ部屋に宿泊しました。
私はエキストラベッドに寝ることになり、なんとなく腹が立っていました。
なんで私だけ簡易ベッドに寝なきゃいけないんだろう?
まあ仕方ないんですけどね。。
勝手に腹を立てながらも、昼間プールで遊んだ疲れもあり、母や兄より先に寝てしまいました。
どれくらい寝たのか?目が覚めました。
部屋を見渡すと、気持ち良さそうにちゃんとしたベッドで寝ている2人が目に入りました。
デジタル時計は午前2:30を表示していました。
疲れていたし、もう一眠りしようとした時です。
私が横たわっているベッドの足元に、ベッドがあったのです。
えっ?どういう事だ?
自分は寝ぼけているのか、まだ夢の中にいるのか?
突然現れた4つ目のベッド。
そこに男性の頭らしき物が見えました。彼も寝ているようです。
声を出して、母と兄を起こそうと思いました。
全く声が出ませんでした。体も動きません。
私は上半身を軽く持ち上げた不自然な体勢で金縛りにあってしまったのです。
4つ目のベッドの左横に、ひっつめ髪の女性が立っていました。
年の頃は40代ほどの女性でした。
痩せた女性で、服装はブラウスに膝丈のスカート。
私は目の前の訳の分からない状況を、ただただ見ていました。
次の瞬間。
その女性が、4つ目のベッドで寝ている男性を滅多刺しにし始めたのです。
一心不乱に、無言で包丁を持ち上げ、振り下ろす。
男性は何も反応せず、振り下ろされる包丁の反動で頭が、ガクッガクッと動いていました。
その時です。
「死にたくなかった…。死にたくなかった…。死にたくなかった…。」
頭に響くような、苦痛を滲ませた男性の声が聞こえてきたのです。
彼は念仏のように、その言葉を繰り返し呟いていました。
最後に女性と目があった気がします。
気づくと朝になっていました。
大人になった今思うことは、不倫の末に起こった事件の再現だったのか?
その女性が、奥さんだったのか?愛人さんだったのかは、彼女が一言も発していないのでわかりません。
それに、ただの私の夢や幻覚だった可能性もある訳です。
そのホテルは老舗ホテルですが、あえて泊まろうとは思いません。
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