
長編
妹x狐狗狸さん
まなみ 3日前
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ツっという音と共に切れてしまった。
一瞬で凍りつく室内。
夏だというのに俺の全身には冷たい汗が滲んでいた。
心臓がバクバクと激しい音を立てている。歯の根が合わない、カチカチと口から音が漏れる。
「お兄ちゃん……」
先ほどとは違う妹の声が後ろから響く。いや、妹だったはずの者の声。
くぐもったような、ひしゃげた女の声。
妹の声とは似ても似つかない。誰だ、今、俺の後ろにいる奴は一体誰なんだ……
確かめたい、この目で、しかし体がいう事をきかない。
恐怖のせいか、俺の足は床に縫われてしまったかのようにビクともしない。
が、次の瞬間、
「お兄ちゃん、こっち向いてよ~」
耳元でハッキリと聞こえた。
俺は反射的に声の方に振り向いた。
そこには、長い黒髪の女の顔があった。
両の目は閉じていて、隙間から赤い血が滴り落ちている。
口は大きく裂けたように開かれ、真っ赤な血のようなものが口の端に見て取れる。
そのおぞましい口が、ゴボゴボと音を立てながらゆっくりと開き、こう言った。
「呪われるって言ったでしょう~?ヒヒヒッ……!」
そこで俺の意識は絶えた。沈み行く意識の中、しゃがれた女の声がいつまでも、俺の耳に響いていた。
あれから三年。
社会人となった俺は、あれ以来一度も家に帰っていない。
忙しいを口実に、俺は実家に帰るのを意識的に避けていた。
もうすぐまたあの夏がやってくる。
今年のお盆も、やはり実家に顔をだす勇気はない。
どう断ろうかと頭の中で整理していると、不意にスマホの着信が鳴った。
スマホの画面には見慣れた名前が表示されている。
妹の名前だ。
俺はゴクリ、と喉を鳴らすと、僅かに震える指で通話ボタンを押した。
「も、もしもし……?」
「あ、お兄ちゃん?久しぶり~どうそっちは?元気にやってる?」
妹の声だ。明るく元気な声。大丈夫、これは妹の声だ、間違いない。
「あ、ああ、元気だよ。ごめんな、なかなか顔だせなくて。で、どうしたんだいきなり?」
なんとか取り繕うと、俺は慌てて返事を返した。
「ううん、元気ならいいんだ、それよりさ、」
「ん?」
いつもと変わらぬ声に、俺は少し安心し、ほっと一息つきながら返事を返す。
「また、コックリさんしようねぇぇぇぇぇ!」
スマホが俺の手を滑り落ちるように床に落ちた。
スピーカーからは、あの夏の日に聞いた、おぞましい笑い声が、俺をなぶる
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- 実話ではなさそうだが、結構いい感じ。匿名