
私が大学に入学した時、友人の成田と共に古びたアパートに引っ越すことになった。そのアパートは建てられてから60年以上が経過しており、外観は古いが中は意外と広々としていた。
成田は特に古いものが好きで、部屋にはアンティークの家具や古書が並んでいた。そのおかげで、どこか落ち着いた雰囲気が漂っていたが、2階の部屋には明らかに違和感があった。窓から差し込む陽射しは薄暗く、常に冷たい空気が漂っていた。
特に夜になると、部屋の奥からかすかな音が聞こえてきた。小さな足音や、何かが転がるような音だった。成田は気にも留めず、ただの老朽化したアパートの音だろうと笑っていたが、私は不安を感じていた。夜になると、私は布団を被っても寒気が収まらず、目を閉じることができなかった。
そんなある晩、ふと目が覚めると、部屋のドアの近くに影のようなものが見えた。それは、体の半分が欠けたような姿で、まるで浮遊しているかのようだった。目が合った瞬間、私は恐怖で動けなくなり、ただその影を見つめるしかなかった。気がつけば、影は静かに消えていった。
翌日、成田にそのことを話すと、彼は興味を示し、古い書物を調べ始めた。「これ、もしかしたら『カクレモモジリ』かもしれない」と彼が言った。カクレモモジリは、昔から言い伝えられている妖怪で、見られると不幸が訪れると言われているらしい。私は一瞬身震いしたが、同時にその存在が自分に何の関係があるのか疑問に思った。
その晩、再び音が聞こえた。今度は明らかに重い物が転がる音だ。恐怖に押しつぶされそうになりながらも、私は布団の中で成田が寝ているのを思い出し、声をかける勇気が出なかった。音は次第に大きくなり、まるで何かがこちらに近づいてくるようだった。
結局、その夜は眠れず、明け方に成田が起きてきた。「お前、昨夜何かあったのか?」と聞かれ、私は影のことを話した。成田はその後も書物を調べ続け、カクレモモジリの伝説を語ったが、私の恐怖は消えなかった。影の存在は、確かに何かを示唆しているように感じられた。
それから数日後、アパートの屋根裏からの音は止まったが、影は一度も見えなくなった。成田は安心していたが、私は不安が募った。カクレモモジリが消えたのではなく、ただ私に見えなくなっただけなのではないかと。
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