
そのアパートは、他の候補と比べても格安だった。駅から近いのに、築年数はかなり古い。リフォーム済みという話で、内装は意外ときれいだった。不動産屋の担当者も「女性でも安心して住めますよ」と言っていたので、気軽に契約した。
引っ越しの初日、荷物を片付けていると、夜が深まってきた。湯船に浸かり、リラックスして床に寝転んだ瞬間、玄関の方から音が聞こえた。「コツ、コツ、コツ」と、まるで誰かがノックをしているかのような音だった。
時計を見たら、夜中の二時。驚きつつも、そっとドアの覗き穴を確認したが、外には誰も見当たらなかった。隣人のいたずらだろうと、その時は思っていた。
しかし、次の夜も同じ時間に、その音が聞こえた。「コツ、コツ、コツ」今度は少しだけ不気味に感じて、管理会社に連絡したが、「特に苦情はありませんし、気にしない方がいいですよ」と言われるだけだった。
三日目の夜、ノックの音が変わった。「コツ、コツ、コツ、コツ」その瞬間、何か悪い予感がした。音が変わったことで、心のどこかが警鐘を鳴らしていたのだ。
不安を感じ、スマホで調べてみると、似たような話がネット上にあった。曰く、ノックが三回のうちは大丈夫だが、四回目が来ると手遅れになるという。バカバカしいと思いつつも、急いで近所の神社に行くことにした。
神社に着くと、神主は私の話を聞いた瞬間、顔色が変わった。「それは、呼ばれているかもしれません」と言われた。三回のノックは結界の外からの合図だが、四回目が来ると境界を越えることを意味するというのだ。
恐怖でいっぱいになり、家に帰るのが怖かったが、逃げるわけにはいかず、そっとドアを開けた。部屋の中は静かだったが、重い空気が漂っていた。靴を脱ごうとしたその時、背後から「コツ、コツ、コツ、コツ」とノックの音が聞こえた。
内側からのノック。つまり、私がいる場所から奥へ向かっている音だった。振り向くと、クローゼットの扉が数センチだけ開いていた。そこから、白い指が見えていた。
恐怖で震えながら後退し、スマホでその瞬間を撮影した。ライトをつける勇気がなく、何が写っているかを確認することもできなかった。
翌朝、明るくなってからスマホを開くと、そこには開いたクローゼットの隙間から無表情の女性がこちらを見つめている画像が写っていた。その画像は、消しても消えなかった。
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