
私は大学生で、実家の父が失業してからというもの、家庭の雰囲気は一変した。冬の寒い夜、父は酒に溺れ、家での居心地は悪化していくばかり。そんな中、私は家を出ることに決めた。友達の家に泊まる予定だったが、誰も受け入れてくれず、結局、私はひとりで公園に向かった。
公園で買った厚手の毛布に包まり、ベンチに横になる。寒さは厳しく、周りの静けさが逆に不安を煽る。時折、風で揺れる木の枝の音が耳に響く。そんな中、突然、目の前に現れたのは、しわだらけの顔をした中年男性だった。薄汚れた衣服を着たその人は、まるで影のように近づいてきた。
「そこ、どいてくれんか」と言われ、私は驚いた。彼もまた、ここに住み着いているのかもしれないと考えたが、私はこのベンチを手放したくなかった。すると、彼は意外にも「そうだな」と言い、別の場所へ移動しようとした。
不安でいっぱいの私は、彼を引き留めることにした。寒くて不気味な公園で、話し相手がほしかったのだ。彼と並んでベンチに座り、話を始めた。彼は静かに私の話を聞いてくれた。
彼の話は、波瀾万丈な人生だった。私の悩みなんて小さなものに思えた。彼は自分の娘を思い出し、私に優しさを示してくれた。それから彼は、私が帰るように促し、タクシーを呼ぶように言った。彼の笑顔が印象に残った。
家に戻ると、母は私を心配して泣いていた。父も改心したようで、再就職を果たしていた。家族は少しずつ元に戻り、私はその公園での出会いを心に刻んでいた。
だが、何度も公園に行ってみたが、あの男性には二度と会えなかった。調べても彼に関する情報は見つからず、数年前にこの公園で亡くなったホームレスの話を聞いた。それは、寒い冬の日のことだった。
私は心の中で思う。あの男性はもしかしたら、私にしか見えなかったのかもしれない。寒い公園での出会いがなければ、私はどうなっていたのかと思う。あの時、声をかけてくれた彼がいたからこそ、今こうして生きていることを感謝している。
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