
一か月前、私は安い賃貸物件を見つけた。
それは、休日のことだった。人の気配がほとんどない静かな図書館街を歩いていると、古びた図書館の窓に「貸し物件 月一万円」という貼り紙を見つけた。
─これはお得だ!
早速、記載されていた電話番号にかけてみると、低い声の男性が応答した。
「家賃をちゃんと払ってくれるなら、いつでもどうぞ」と。
「なぜ、こんなに安いのですか?」と尋ねると、彼はこう語り始めた。
この図書館は元々、彼の祖父母が開いたもので、祖父が亡くなった後、祖母が一人で経営していた。しかし、経営がうまくいかず、借金を抱えることになった。五年前、突然彼女は姿を消したという。
その後、彼は地元を離れ、東京で働いているが、図書館を売ることもできず、仕方なく貸し出すことにしたのだ。
私はその図書館に住むことになった。
図書館は一階が書庫で、二階が居住スペースになっている。書庫はほとんど手つかずで、古い本の匂いが漂っていた。壁には無造作に並べられた本が、薄暗い場所で静かに存在していた。
二階の住居は、狭いが必要なものは揃っていた。ただ、建物自体が古く、冬の寒さは厳しかった。
私は近くのカフェで働いており、毎晩遅くに帰る。図書館は寝るためだけの場所になっていた。
ある12月の寒い夜、仕事を終えた私は、急いで自転車で帰った。書庫のシャッターを開け、薄暗い中に入る。エアコンのスイッチを入れ、服を脱いでシャワーを浴びると、布団を敷いて電気を消し、すぐに眠りに落ちた。
─微かな音が聞こえた。チリン、チリン、チリン……。
目を覚ますと、耳に残る鈴の音が、どこからか聞こえてくる。天井からのようだ。
「猫でもいるのかな?」と考えたが、すぐに再び眠りについた。
その音は、翌日も、またその翌日も続いた。だんだん視線を感じるようになり、寝不足が続いていた。ついには、三日目の夜、我慢できずに天井を調べる決心をした。
仕事を終え、部屋に戻ると、椅子を用意し、天井の板を外す。冷たい風が顔を撫で、かび臭い匂いが鼻をつく。懐中電灯を持って天井裏を照らすと、無数の本が散乱しているのが見えた。
その時、また鈴の音が聞こえた。驚いて振り向くと、そこには……。
最初、マネキンのように見えたが、違った。それは人間だった。薄紫の着物を着た女性が、暗闇の中で不自然に吊り下がっていた。彼女は、私が見た写真の女性だった。
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