
「この子が生まれてはいけない」
私の母の友人、佳恵さん(仮名)は、初めての妊娠が分かったとき、そう思ったという。何がいけないのかは彼女にも分からなかったが、堕胎を考えるほどの不安に苛まれた。
しかし、周囲は「妊娠中の気持ちだから」と片付け、佳恵さんは不安を抱えたまま出産を迎えた。生まれたのは女の子で、名付けて雪(仮名)。
ところが、雪ちゃんが小学校に入ると、彼女の周りで怪奇現象が起き始めた。雪ちゃんが無邪気に遊んでいると、村のあちこちで不可解な事故が相次いだ。特に不幸なことに、彼女が親しんでいた友達が次々と不幸に見舞われた。
村の人々は雪ちゃんを忌み嫌い、彼女が関わると不幸が訪れると噂した。佳恵さんはその噂を耳にし、心が締め付けられる思いだった。
そんなある日、雪ちゃんが友達を助けようとして、滑って雪の中に転げ落ち、命を落とす事故が起きた。
その報を聞いた佳恵さんは、悲しみを通り越して茫然自失となった。雪ちゃんが助けようとした友達は無傷だったのだが、彼女の死を知った両親からは感謝の言葉も謝罪もなかった。
さらに辛いことに、雪ちゃんが亡くなった後、村では「彼女の存在が不幸を呼んでいた」という噂が広まった。
そんな折、佳恵さんは雪ちゃんのお墓に訪れ、涙を流しながら呟いた。「あなたが生まれてはいけなかったのは、私の気持ちが正しかったからなの?」
その時、ふと彼女は声を聞いた気がした。「お母さん、私は生まれるべきだった。」
驚愕する佳恵さん。彼女はその後、雪ちゃんの友達の母親から手紙を受け取った。「雪は生まれるべきではない子だったのです。妊娠中からこの子は不運をもたらすと思いました。雪が亡くなったことで、私たち家族は救われたと思っています。本当に申し訳ありません。」
手紙の内容に佳恵さんは震え上がった。自分の妊娠中の感情と、友達の母親の思いが一致するとは。
雪ちゃんはその後、村から姿を消し、どうしているのかは分からなくなった。
「あなた、小説を書いているって聞いたけど、このことも物語にして、広めてほしい。」
最後にそう言った佳恵さんの目は、まるで魔物のように冷たかった。
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