
子供の頃、友達と遊ぶ場所はいつも同じだった。
それは山道へ続く道で、急勾配の上り坂。
先が見えない道路をみんなで息を切らせて上っていき、誰が決めたわけでもない地点で止まる。
そして全速力で下るのだ。
途中で転んだり、勢い余って茂みに突っ込んだり、生傷の絶えない毎日だったが、それが楽しくて仕方がなかった。
下り終えたらまた坂道を上り、また走って下る。
大人になった今では何が面白かったのか疑問だが、当時は坂を登る度に見上げていた道の先が空に続いていくようで、それがたまらなく好きだった。
小学四年生の夏休み前、私の急な転校が決まった。
そして時を同じくして、ヒロキが交通事故で亡くなった。
ヒロキは、一番仲の良かった友達だった。
親友ってこういう関係のことをいうんだろうか。子供ながら、そんなことを考えるくらいにはいつも一緒にいた。
坂道を走れば、「お前はよく転ぶから体の角度を変えろ」とアドバイスをしてくれた。
家で遊べば、ゲームの裏技を得意げに教えてくれた。
転校、親友の死。頭も心もぐちゃぐちゃになっていた私は、連日泣き続けて現実を受け止められずにいた。
ニカッと八重歯を見せて笑うヒロキの顔がずっと頭から離れなかった。
ヒロキの死は周りにとっても衝撃的な出来事で、男女問わず人気のあったヒロキがいなくなってしまったことを受け入れられずにいる同級生はとても多かった。
それでも日常は残酷に過ぎていき、引っ越しの前日、ふとあの坂道が頭に浮かび、気付けば家を飛び出していた。
「暗くなる前に戻ってきなさい!」という母親の声が遠くに聞こえ、陽が傾きかけた空を見つめながら坂道に向かって走った。
あそこに行けばもしかしたらヒロキがいるんじゃないか、棺の中のヒロキは本当に眠っているような姿だったし、死んだっていうのはタチの悪い冗談で、落ち込んでいる私たちを物陰から見て笑っているんじゃないか。
そんな都合のいいことを考えながら、汗なのか涙なのかわからない雫をぬぐって駆け抜けた。
坂道に着くと、いつも遊んでいた面子が揃っていた。
みんな顔を見合わせて、誰からともなく空へ続く道を見つめヒロキの名前を呼んだ。
まだまだ枯れそうにない涙を流しながら、喉が潰れるほど叫んだ。
木々に太陽が隠れて影が大きくなった時、「何してるの?」と大人の声が聞こえた。
振り向くと、作業着姿の男性が不思議そうな顔をして私たちを見ていた。
不意を突かれた私たちはしどろもどろになり、互いの顔を見た瞬間、我に返った。
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