
冬の夕方。大学三年生の僕たちは、ある友人の言葉に導かれて山奥の廃校へと足を運んだ。友人の名は佐藤。彼は「面白い場所がある」と、興奮気味に話していた。
その廃校は、地元の人でも知らないような細い道を抜けた先にあり、地図にも載っていないという。
「本当に不気味らしいよ。行ってみようぜ!」と、僕ともう一人の友人、川口を誘った。
雪がちらつく中、薄暗い森を抜けていくと、やがて眼前に廃校が現れた。外見は崩れかけた木造の校舎で、まるで時間が止まったかのような佇まいだった。
「ほら、校舎の雰囲気、なんかいい感じじゃない?」と佐藤は嬉しそうにスマホを構えた。
中に入ると、廊下は薄暗く、壊れた窓からは冷たい風が吹き込んできた。床には瓦礫が散らばり、教室の壁はカビに覆われていた。
そのとき、二階の教室に足を踏み入れると、中央に一つだけ古びた木製の机が置かれていた。周囲は埃だらけなのに、その机の周りだけは不自然にきれいだった。
「うわ、これ、すごく絵になるな……」
佐藤が無言でスマホを構えた。「撮らない方がいいんじゃない?」と川口が小声で言ったが、止める前にシャッター音が響いた。
その机はただの机だった。誰も触れず、近づかず、それで済むと思った。
しかし、一週間後、佐藤が行方不明になった。最後に見たのは、普通に大学で講義を受けていたときだった。
その日の夜、彼のスマホも財布もそのまま、何も盗られていないまま姿を消した。まるで、彼が自分の意思で消えたかのように。
二週間後、川口もまた姿を消した。前日の夜、彼は「最近、変な夢を見てるんだ」と電話で言っていた。「夢の中で、教室の真ん中に机が置いてある。毎晩、少しずつ近づいてくるんだ……」
彼の声は震えていたが、笑いを交えていた。
川口の部屋にも、侵入の形跡はなかった。何が起きているのか理解したくなかった。
しかし、僕は見てしまった。佐藤が撮った写真が、アルバムに残っていた。あの机の写真が三枚。
最初の一枚。教室の真ん中に机がある。
二枚目。机の後ろに、白い何かが写っている。それは、ぼんやりとした人影だった。
そして三枚目では、その影が机の前に立ち、カメラの方を向いていた。スマホの画面越しに目が合った気がして、背筋が凍った。
すぐにアルバムを閉じ、LINEも消した。しかし、その夜から不安が続いた。帰宅すると、部屋の中央に空白があるように感じる。
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