
「この話を最後まで読んだ者は……。」
その一文が書かれた紙を見つけたのは、俺が大学に入って間もない冬の夜だった。オカルトサークルの活動で、山小屋に泊まることになった。その日は雪がちらつく中、集まったメンバーとともに心霊スポットに関する話をしながら、暖を取っていた。
俺はその紙のことを思い出し、軽い気持ちで話すことにした。どうせ、こういう話は盛り上がるだろうと。
「俺の地元に『この話を最後まで読んだ者は……』って書かれた謎の紙があったんだ。」
「それ、どんな話なの?」と、隣にいた女子が興味を示す。
「内容が面白くてさ、夜になると、日によって違うメッセージが書き加えられるんだ。最初は『誰かを見つめないで』とか、『名前を呼ばないで』とか、そういう感じ。」
みんなが静かに耳を傾ける。
「でも、そのメッセージがだんだんおかしくなってきて。『見ないで』『気づかないで』、そして、次第に意味不明な内容になっていった。」
「それ、普通に怖くない?」と男が言う。
俺はその反応に少し驚いた。もっとふざけたノリだと思っていたからだ。
「でも、オチはないんだ。話の続きは考えたこともなかったし、ただ不気味なだけで……」
その時、隣にいた男が低い声で言った。「でも、もしそのメッセージに従わなかったら、何が起こるの?」
「え? ああ、うーん……」
頭が真っ白になる。作り話だし、設定すら考えていなかった。だが、口から出たのは思いもよらぬ言葉だった。
「それは、たぶん……何も起こらないと思う。」
静寂が訪れる。
誰かが小さく笑ったが、その笑い声はすぐに消えた。
「違うよ。」
その男が再び呟いた。
「喰い殺されるんだ。」
その言葉は、全員の心に響いた。
「真っ黒な影に。」
「羽が生えてて。」
「体が裂けて。」
「ぬめぬめしてて。」
「這い寄ってきて。」
「冷たくて。」
「食べられて。」
「叫ぶこともできない。」
「熱い。」
「痛い。」
「だから……この話を知ってはいけない。」
その瞬間、俺たちは誰もが息を飲んだ。
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