
冬のある金曜日、僕は同僚の美咲と後輩の田中と一緒に仕事帰りに飲みに行くことにした。楽しい時間を過ごし、終電を逃した僕たちは、田中の家に泊まることにした。彼は高層マンションの最上階に住んでおり、眺めが抜群だった。
田中の部屋に到着し、広々としたリビングに感心しつつ、少しお酒を飲んだ後、すぐに眠ることにした。美咲はリビングのソファに寝ることにし、僕は田中の部屋の隅に敷かれた布団の上で横になった。
目を閉じると、すぐに眠りに落ちた。しかし、どれくらい経ったのか、ふと目が覚めた。暗い部屋の中、布団の足元に何かの気配を感じた。何かがこちらを見ている。
恐る恐る目を開けると、そこには人影があった。田中か美咲かと思ったが、彼らはどこにも見当たらない。人影の手には冷蔵庫の中にあった包丁が握られていた。
心臓がドキドキし、強盗かもしれないと考えたが、動けずにただ目を閉じて寝たフリをした。人影は静かにこちらを見つめているようだ。
その後、しばらくの間、動きがなかったが、ふと気配が変わった。30秒ほど待ち、恐る恐る目を開けてみると、そこにはもう誰もいなかった。
怖くなり、ソーッと部屋を出て、マンションのエレベーターで逃げ出した。次の日、田中に連絡すると、彼は「昨日はお酒が入っていたから夢でも見たんじゃない?」と笑っていた。
しかし、翌週から田中は連絡が取れなくなり、いつの間にかあの高層マンションも引き払われていた。彼の行方が分からないまま、恐ろしい記憶だけが心に残った。寒い冬の夜の出来事は、まるで夢のようだったが、確かに現実だったのだ。僕は決して忘れない。恐怖がどこに潜んでいるのか、わからないままで。あの日の冷たい包丁のことを。
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