
私は深夜の食堂でバイトを始めた。正直、初めての場所で少し緊張していたが、仕事が見つかって嬉しかった。
営業が終わった後、料理長が作った賄いを食べるのが楽しみだった。具材の組み合わせが絶妙で、毎回違った味に仕上がるのが魅力だった。そんなある晩、食堂の片隅から「ガラッ」と大きな音がした。私は一瞬驚いたが、営業後は椅子を片付けるための音だろうと気にせずにいた。
「何か落ちた?」と料理長に聞くと、彼はため息をついて「またか…」とだけ答えた。
数日後、同じように賄いを食べていると、今度は「ピンポーン」と客席の呼び出しベルが鳴った。もちろん、誰も押していないはずだ。料理長が「一緒に見に行こう」と言うので、恐怖を感じながらもついて行くことにした。
電気をつけて確認すると、呼び出しベルのパネルに表示されたのは、存在しない番号だった。驚く私を尻目に、料理長は青ざめた顔で「今日はもう帰ろう」と言って、さっさと後片付けを始めた。
私はそのまま店を出たが、駐車場でふと中を見ると、誰かが立っているのが見えた。最初は料理長かと思ったが、すぐに彼が出てきたため、私は心臓が止まりそうになった。急いで帰宅した後、次の日も夜のシフトを外してもらおうと頼んだが、「人手が足りないから無理だ」と言われた。
それでも、時給が上がるという誘惑に負け、結局そのまま働き続けることにした。数日間は何も起こらなかったが、ある晩、料理長に「最近は変なことも起きてなくて良いですね」と言ったら、彼は微妙な反応を見せた。どうやら、何か気になることがあったらしい。
「実は、近くの廃墟に昔の人が出るって話を聞いたことがある。最近、客席の近くに痩せた武士の影が見えるってんだ」と彼が言った。そんな冗談を言うわけがないと思った私は、笑って流そうとした。だが、彼の真剣な顔を見ると、恐怖が胸に迫ってきた。
その瞬間、再び呼び出しベルが鳴った。私は恐怖に駆られ、バックを持って車に走り、車の中から中を見てみると、やはり立っている影が見えた。甲冑を着た男が、私をじっと見つめている。全身が震え、急いで車を発進させて帰宅した。
それ以来、あの食堂には一度も行っていない。料理長からは何度も着信があったが、無視し続けた。そうして、数年後に地元に戻った際、食堂の前を通ると、やっぱりあいつの影が見えた。思わず目を疑ったが、そこには確かに彼が立っていたのだ。
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