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中編
まだ足りない私
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まだ足りない私

1週間前
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畳の縁が揺れていることに気づいたのは、たぶん私だけです。

最初は目の錯覚だと思いました。でも私は、自分の感覚をあまり疑わないことにしています。なぜなら私は、わりと鋭いからです。先生にも「感受性が強い」と言われました。それはつまり、普通の人よりも世界の裏側を感じ取れるということだと思っています。

お母さんに言ったら、「古い家なんだから歪むでしょ」と笑われました。そういう問題ではありません。揺れ方に意味があるのです。畳の縁の織り目が、一定の間隔でふくらんで、また元に戻ります。まるで息をしているみたいです。私はそれを見つけたとき、少し誇らしくなりました。やっぱり私だけが気づけるのだと。

この家は、叔父のものです。叔父は学者だったそうですが、何の学者かは誰も教えてくれません。書斎には難しそうな本がたくさんあります。医学とか宗教とか、人体の図とか、よくわからない言葉が並んでいます。余白には細かい字でたくさん書き込みがあります。

「容器は中身を誤認する」

「内側と外側は交換できる」

そういう文章です。意味は全部わかるわけではありません。でも私は、なんとなくわかります。なんとなく、というのは大事な感覚です。全部説明できなくても、感じることができる人のほうが本当は深いのです。

叔父はこの家で亡くなりました。首を吊ったと聞いています。でも私は、ただの自殺だとは思っていません。叔父はきっと、何かに気づいてしまったのです。そして、外に出たのだと思います。体の外に。だからこの家に何かが残っているのです。

夜になると、畳の揺れははっきりします。布団に横になると、背中の下がほんの少しだけ持ち上がります。最初は怖いと思いました。でも今は違います。むしろ、確認されている感じがして安心します。家が、私を確かめているのです。

廊下を歩くと、板がやわらかく沈みます。腐っているのではありません。足裏に吸いついてきます。ぬるっとしています。でも嫌ではありません。拒絶されていないということだからです。

書斎に入ると、空気が重いです。障子が風もないのに少しだけ膨らみます。私は何度も見ました。偶然ではありません。呼吸しています。この部屋は生きています。

私は勇気を出して、床に耳をつけました。冷たいはずなのに、なぜか温かく感じました。どく、と音がしました。私の鼓動とは少しずれています。胸に手を当てると、ちゃんと打っています。でも床の下からもあります。二つあります。

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幽霊より人間が怖いタイプです。

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