
あれは、友人と二人で深夜のドライブをしていた時のことだ。俺を仮に「タク」とし、友人の「ケン」と「リョウ」と一緒だった。大学の部活動で知り合い、気がつけば仲良くなっていた。時折集まっては自宅で映画を観たり、酒を飲んだりして過ごしていたが、ドライブは共通の趣味だった。
その日、俺達はケンの運転でドライブに出かけた。目的は特になく、ただ気の向くままに走るだけ。いつも通り、適当に夜食を食べて帰るのが習慣だった。だが、今夜は違った。リョウが突然、「あそこに行こう」と言い出したのだ。
リョウが指差したのは、近くの山の中にある展望台。昼間は美しい景色が楽しめ、カップルが訪れる場所だが、夜になると心霊スポットと化すことで有名だった。女性の泣き声が聞こえる、首吊りの亡骸が現れる、などと言われている。
不安を抱えながらも、俺達は山道に入って行った。車のヘッドライトが道を照らす中、周囲は静まり返り、ただケンの運転する車の音だけが響いていた。しばらく進むと、突然、前方に人影が現れた。彼女はダウンジャケットを着て、うつむいたまま立っていた。
「声かけてみる?」とケンが言い、俺とリョウも頷いた。彼は窓を開けて、「すみません、道を空けてくれませんか?」と大きな声で呼びかけた。すると、その女性はゆっくりと顔を上げてきた。長い髪に、無表情の顔。一瞬、俺達は何か不気味なものを感じた。
「何してるんだろう、この時間に?」リョウが呟き、俺も同じことを思っていた。彼女の顔は痩せこけており、目は異常に大きかった。笑っているのか、口角が上がっているように見えたが、ただの無表情だった。
「おい、近づいてきてるぞ!」俺が言うと、ケンは急いで車をバックさせた。しかし、女性はゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
「マジでやばいって!」ケンが慌てて車を発進させると、女性との距離が離れていく。後部座席の俺は、怖いもの見たさで振り返った。女性が暗闇に消えていく姿を見送った。
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