
大学生の頃、千葉の1Kのアパートで一人暮らしをしていた時の出来事です。
ある夜、当時付き合っていた彼が部屋に泊まりに来ていました。
深夜、何の前触れもなく、ふと目が覚めました。
部屋の空気がおかしいことには、すぐに気づきました。空間の一部だけが、妙に重いのです。
場所は、テレビのすぐ横。
そこに「何かがいる」と直感しました。
姿が見えるわけではありません。けれど、そこだけ空間の密度が異様に高く、確かな「存在」がそこに留まっているのです。
視線も、怒りや恨みといった感情も伝わってきません。ただ、そこが自分の定位置であるかのように、圧倒的な圧迫感だけがそこに鎮座していました。
隣で寝ている彼を起こそうとしましたが、体がすくんで動きませんでした。
もし彼を起こして「そこに誰かいる」と認めてしまったら、その存在をこの部屋に確定させてしまう――そんな気がして、私は震えながら朝を待つしかありませんでした。
それから二ヶ月後。
彼とは別れ、私は千葉のアパートで一人で過ごしていました。
またあの日と同じ、肺を圧迫されるような違和感で目が覚めました。
――また、いる。
テレビの横。
あの日と同じ場所に、同じ「何か」がいました。
人の形は見えません。けれど、あの日よりも明らかに「そこ」が濃くなっていました。
ただの塊のはずなのに、どこか嫌な生々しさが混ざっているのです。まるで誰かがそこに座り込み、じっと動かずに息を潜めているような気配でした。
私は意を決して、部屋の電気をつけました。
ぱっと明るくなった室内に、やはり人影などありません。誰もいないのです。
それなのに、視界には何も映っていないはずのテレビの横に、変わらず圧倒的な「何か」が存在している感覚だけがはっきりと残っていました。
ですが、不気味でありながらも、あの日ほどの恐怖はありませんでした。
2回目だったから慣れてしまっていたのかもしれません。今思い返せば、それは得体の知れないバケモノの類ではなく、襲いかかってくるような悪意も絶対にない、「ただそこに置かれているだけの存在」だと、どこかで感じ取っていたのだと思います。
だからでしょうか。あんな空間の中で、私はなんだかんだそのまま眠ってしまいました。
後日、共通の知人から話を聞き、分かったことがあります。
彼は私と付き合っていた間、元カノと別れてなどいませんでした。私は知らないうちに、彼女の居場所を横取りした立場にされていたのです。
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