
夢が叶った瞬間、冷めた気持ちになることがある。そんな話をふと思い出す日、僕は家族サービスのために、冬の寒い夜に冷蔵庫を開けた。しかし、そこには何も入っていなかった。妻の美奈子は、息子の大輝を連れて友達の家に出かけている。今日は特別に手料理を作ろうと張り切っていたのに、何もないとは思いもしなかった。
仕方がないので、エコバッグを持って近くのスーパーに向かう。外は冷たい風が吹き荒れていて、時折雪が舞っている。店内では、いろいろな食材を選びながら、久しぶりに料理をするという楽しみで心が膨らむ。だが、ふとした瞬間、心の奥に虚しさが広がる。あの幸せな生活が壊れてしまうのではないかという不安が、いつも付きまとっていた。
買い物を終え、玄関の鍵を開けようとした時、違和感に襲われる。ドアは開いていた。いつもは細心の注意を払っている戸締まりを、今日はなぜか忘れていた。美奈子と大輝が出かけている間に、誰かが入ってきたのだろうか。
恐る恐る部屋に入ると、そこには男が待ち構えていた。目出し帽を被り、無言で立ち尽くしている。僕は一瞬で動けなくなり、心臓が高鳴る。男は「声を出すな。出したら殺す。」と低い声で言った。恐怖が全身を包み込む。
金を要求され、恐怖で身体が硬直する。冷静に考えようとするも、何も思い浮かばない。男は僕の手を掴み、強引に押し倒す。痛みが走り、恐怖がどんどん増していく。
「お前、家族のために何ができる?」その言葉が耳に残る。なんでこんな状況で、そんな問いをされなければならないのか。僕はただ、家族を守りたいだけなのに。
その瞬間、男の目が変わった。「お前、気持ち悪いな。なんで笑ってる?」と言い放つ。今、僕は笑っていたのか?恐怖のあまり、顔が引き攣っていたのだろう。男は何を考えているのか、全く理解できない。
そんな男が急に優しくなった。「大丈夫だ。お前は病院に行くべきだ。」と言い、僕に財布とスマホを持ってくるように促す。まさか、強盗がこんなことを言うなんて。彼の言葉に従い、戸惑いながらも外に出る。
小さな診療所に到着すると、医師から統合失調症と診断される。僕の見ていたものは全て幻だったのか。自宅のドアで自分の指を折り続けていたのは、実は自分自身を救うためだったのだ。僕は、理解されない存在になってしまった。
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