
私は社会人になりたての頃、友人に勧められて趣味として花を生けることを始めた。彼女が通う教室は、静かな田舎町の一角にあり、冬のある日、初めて足を運んだ。教室での時間は心地よく、花を生ける楽しさにすっかり魅せられてしまった。
教室で生けた花を持ち帰ると、家に帰ってからしばらくは美しい姿を保つが、二、三日も経つと枯れてしまう。そこで、私は生けた花を近くの公園の小さな陶器の瓶に挿すことを思いついた。この公園なら誰かに見てもらえるかもしれないし、せめて何日かはその美しさを楽しんでもらえるだろうと思った。
ある冬の晩、私はその公園に向かって歩いていた。公園の片隅には、私が生けた花が小瓶に入れられているのを見つけた。自分が挿した花が他の誰かに愛されていることに、少し嬉しさを感じていた。
その日から、私はその公園に頻繁に通い、毎回花を挿していた。数日後には、その小瓶がいつもきれいに飾られていることに気づいた。誰かが同じように花を挿しているのだろうか。そんなことを考えながら、私はその地元の人々と少しずつ親しくなっていった。
冬が深まるにつれ、ある日曜日に友人と公園を訪れた時、目の前に立っていたのは一人のお婆さんだった。彼女は心を込めて小瓶に手を合わせている。
「おはようございます。お花、綺麗ですね」と声をかけると、彼女は微笑んで「ありがとう。この花は、あの子がいつもここに来ていたからね」と言った。
「えっ、あの子?」私は首を傾げる。
「そう、去年の冬に事故で亡くなった子なのよ。ここでいつも遊んでいたの。だから、みんなこうして花を供えているの。」
その言葉に私は愕然とした。まさか、私が挿した花が誰かの記憶の一部だったとは。私は慌ててその場を離れた。
それからというもの、その公園には行かなくなった。花を生けることは楽しいが、私はその小瓶に手を触れることができなかった。
数ヶ月後の春、友人に誘われてまた公園に行くことになった。心の片隅で何か恐ろしいものが待っている気がしていたが、友人と一緒なら大丈夫だと思っていた。公園に着くと、驚くことに小瓶はまだそこにあり、また新しい花が挿されていた。友人が「この公園は本当に素敵だね、いつもきれいにしている人がいるんだね」と言った。
不安が胸を締め付ける中、私は小瓶に近づいてみた。すると、何かが背中に触れた。振り向こうとした瞬間、全てが真っ暗になった。
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