
中編
山中の歩道橋
匿名 2017年4月13日
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これは東海地方のある県にある山の話です
その歩道橋は、歩道のない
徒歩では立ち入る事が出来ない道、
急カーブの手前に存在していました。
では、この歩道橋は何の為に…。
錆びて古くなった今も設置されたままなのでしょう。
この山にやって来る走り屋…ツーリングの集団…の中ではある噂が密かに広まっていました………。
そんな山に私もたびたび登る事がある。
走り屋気取り、とはいかないが、休日に自慢の愛車でのんびりと景色を楽しみに行くのだ。
ある冬の寒い日も買い物ついでにのんびり登っていく。
時刻は午後3時20分くらいと言ったところか。
登りきり、駐車場に車を停めると眠くなってきたのでシートを倒し少し目を閉じる。
コツン…ッ…コツン…
小さな音で目がさめる。
コツン…。
フロントガラスに目をやると、小さな水滴が…雨か。
エンジンをかけカーナビの時計を確認すると、午後5時前になっていた。
あたりはすっかり暗く、駐車場内の車も大分減っていた。
(下るの怖いなぁ…)
しかし帰らないわけにもいかない…。
しぶしぶ車を山道に向けた。
ライトを付けても数メートル先は闇。
窓を開ければ、冬独特の冷たい風が吹き込み、カサカサと木々の音だけがする。
いつもは、マイナスイオンだ何だとウキウキしているのがバカみたいだ。
後ろに追いつかれない限り、ルームミラーもただ真っ黒な闇を写しているだけだった。
そんな状況では嫌でも思い出してしまう噂
そう、山中の歩道橋。
なんでも女の子の霊が出るとか。
関係があるのかは定かでないが、
その山での交通事故は多い。
実際、道にはブレーキ痕が多数存在する。
(立ち入れない場所の歩道橋なんて、誰も使えないじゃないか…)
(じゃあ、使っているのは…)
嫌なことを考えていた時、少し急なカーブに差し掛かる。
その次のカーブの先が歩道橋のところだ。
(うわっ…やばい!)
速度を考えずにカーブに入ったせいで、車は見事に横滑りした。
ドクン…ドクンと心臓から嫌な鼓動がする。
(早く帰ろ…)
再び車の速度を上げた。
歩道橋のところもササッと通ってしまえば大丈夫だ、という根拠のない考えで自分を納得させた。
ドキドキしながら次のカーブも通り抜ける。その先だ…。
そして俯きがちに歩道橋のところも通り過ぎた………。
(よかった…何もなかった!)
そう思って顔を上げた時
はるか先のカーブ手前を何かが横切る。
動物…?…ビニール袋とか…?
頭の中で必死に言い訳しようとしたが
分かっていた。
身長1メートル強ある、人間だ。
白いワンピース姿の女の子。
どうしよう…どうしよう…と思いながら、車は走り続ける。
そして先ほど女の子を見たカーブを通った。
でも何もいなかった…。
(絶対ついてきてる…)
それは直感だった。でもそんな気がし始めた。
それから異変を感じたのは、5分くらい走った時だった。
普段山を下る時、15分もあれば降りきる事が出来るのだがいつまでたっても、降りた先の交差点にたどり着かない。
おまけに降り始めと似たようなカーブを走っている気がしてならない。
そう、気づき始めた時。
カーブの先に、歩道橋が見えた。
その山に一箇所しか無いはずの。
(嘘…だ…)
幻覚だ…。
必死に思い込もうとした。
でももう目の前に歩道橋が迫っていた。
また俯きがちに歩道橋のところを通り過ぎた。先ほどの女の子はどこにも見えない。
しかし、ルームミラーの中には居た。
ゆっくりと後部座席の方へ振り返る
後部座席に座っている
女の子は俯いたまま言った。
「車に……ひかれちゃったの…」
「ねぇ…助けて…」
「うわあああああ」
ハッと顔を上げると車は停まっていた。
歩道橋の先の次のカーブにある路側帯に停まっていた。
時刻はまだ午後5時過ぎだった。
後日談:
- 何かが本当で何かが偽りです。
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