
長編
偽リナキ体験談
まなみ 8時間前
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分かります。
唖然としました、が私は力を振り絞り、フラフラと立ち上がると、ゆっくりと階段を降りました。
デパートを出て商店街の中に戻ります。
周りから聞こえてくる喧騒が、私のズタズタになった心を癒してくれました。
ですが、商店街の入り口まで来て、私は立ち止まりました。
足が棒のように重い。これ以上は動かせない。
呆然と立ち尽くす私の目に、電話ボックスが映りこみました。
迎えを呼ぼう、さっきの事を話せば、きっと親も迎えに来てくれるはず、そう思ったんです。
ボックスに入り100円を入れると、直ぐに家に電話しました。
何回かのコールが鳴ったのち、聞きなれた母親の声が、耳元で聞こえました。
泣きそうでした。いや、泣いていました。そのせいでうまく喋れません。必死に説明するも、
親にはまったくと言っていいほど話が伝わりません。
受話器の向こうで母親が苛々しているのが分かります。どう説明すればいいんだろう、そう思った時でした。
目の前に、こちらに接近してくる一台の車がありました。それはまるで、私の目の前でスローモーションのように見えました。
対向車線をはみだしこちらに迫るタクシー、タクシーの運転手らしき男性が、歩道を走りながら、
「車泥棒!!」
と叫んでいます。そして次の瞬間、そのタクシーは、私のいる電話ボックスの手前のガードレールに、
ガッシャーン!!
と、けたたましい音と共に、頭から突っ込んだのです。
幸い、タクシーはガードレールを突き破る事はなく、電話ボックスの手前で停まりました。
辺りは騒然としています。私はその場でうずくまりまたもやガタガタと震えていました。
周りからは、
「運転手は!?」
「おらん!」
「どこいったんや!?」
「タクシー盗まれたー!!」
と怒鳴り散らすような声が飛び交っていました。
受話器からは母親が私の名前を連呼する声が聞こえます。
私は震える手で受話器を持ち直し、耳元へと運びました。
すると母親が、
「あんたいい加減にしなさいね!?何騒いでるの??まあいいわ……とにかく、今日はどうするの?泊まっていくの?帰ってくるの?」
「えっ?」
母親の声に、思わず聞き返します。
「泊まっていく?だ、誰が?」
私は声を振り絞り聞き返しました。すると母親は、
「アンタの事よ。30分前くらいに、今日は泊まるから帰らないよって電話してきたじゃない
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- 文章上手いですね。 おもしろかったです。匿名