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中編
受領の残響
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受領の残響

3週間前
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佐久間は、公立図書館の地下深くにある「保存期限を過ぎた行政資料」の裁断・破棄を請け負う専門の業者だった。

彼には、作業の精度を自らに課すための、奇妙な手順がある。 特定の古い管理番号——末尾が「0」で終わる茶封筒——を手にする際、彼はわずかに指先が震えるほどの高揚感を感じるのだ。普段は淡々と機械を動かすだけの男だが、その数字の羅列を目にすると、どれほど疲れていても作業の手を止めることができなかった。

一日の作業を終える際、彼は必ず無人の書庫に向かって、決まった言葉を投げかける。

「本日分、すべて受領しました」

広い書庫の奥、照明の届かないスチールラックの列に向かって、彼ははっきりと声を出す。 もともとは、閉鎖空間での作業における孤独感を紛らわすため、あるいは自分自身の意識を「仕事モード」から切り替えるための、ただのルーチンだった。誰もいないはずの空間に声を出すことで、自分の存在を再確認する。それは彼にとって、一種の精神的な防犯儀礼でもあった。

その日は、例年になく日差しが強い午後のことだった。 地下書庫は地上より数度気温が低いはずだが、なぜか妙に空気が澱み、湿り気を帯びていた。予定していた箱の処理をすべて終え、重い防塵マスクを外した佐久間は、いつものように奥の暗闇を見つめた。

「本日分、すべて受領しました」

一瞬の静寂の後、それは返ってきた。

「……確認した」

低く、しかし複数の喉が同時に鳴ったような、不自然に共鳴する声だった。 老人のようでもあり、子供のようでもあるその響きは、書庫の鉄製ラックの隙間から染み出すようにして届いた。

佐久間の指先から、持っていたバインダーが滑り落ちた。 コンクリートの床に響く硬い音が、自分の鼓動よりも大きく感じられた。彼は何も見なかったことにして、震える手で重い鉄扉を施錠し、逃げるように地上へ出た。

翌朝、彼は現場責任者からの電話で叩き起こされた。 地下書庫で「異常な事態」が起きているという。

現場へ駆けつけると、昨日整理したはずの「廃棄予定の資料」が、書庫の床一面にぶちまけられていた。 ただ散乱しているのではない。すべての紙が、まるで何かの熱で溶けたかのように、不自然に歪んで癒着していた。

そして、その表面には無数の「手形」が残されていた。 インクが滲んだような黒い跡。指が異常に長く、関節が一つ多いような、人間の骨格を逸脱した形。それが、奥の暗闇から扉に向かって、這いずるように続いていた。

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