
短編
見知らぬ女
匿名 2日前
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私は毎日朝いちばんに出社する。
朝早く来て夕方定時で帰りたいからだ。
その日もいつも通り、朝7:15頃に会社に到着し、3Fにある事務所まで階段で上がっていった。
階段を上がっていると、何やら上の階から女の人の話し声が聞こえてきた。
「掃除のおばちゃんたちが世間話でもしているのかな」
私はそんな風に思い、一歩一歩階段を上がっていった。
やがて3階に辿り着き、エレベーターホールに繋がる扉に手をかけた。
その時、先ほどの話し声がその扉越しに聞こえることに気が付いた。
何と言っているのかは分からないが、ごにょごにょと女性の声がする。
私はドアを開け、エレベーターホールにいた掃除のおばちゃんたちに挨拶をして事務所への扉を開錠する・・・はずだった。
「おはようござ・・・・・・いま、す・・」
ドアを開けた私は固まってしまった。
明りのついていない薄暗いエレベーターホールには、見たことのない女が一人立っており、
壁に向かって何か独り言をぶつぶつぶつぶつ呟いていたのだった。
その風貌はとにかく異様だ。
背は低く太っていて、長い黒髪はぼさぼさ。服は黒ずんで薄汚く、染みだらけのズボンは尻までずり落ちている。
表情は全くの無で、薄暗い中、二つの目玉だけがぎらぎらと光っていてかなり不気味であった。
私は全くの予想外の出来事に思考停止に陥り、その女を凝視したまま固まってしまった。
何やら呟いていた女は、やがて私をぎろりと睨み付けると、こちらに向かって歩み寄ってきた。
私はとっさに身構えた。
するとその女はまるで私が存在していないかのように隣を通り過ぎると、私が上ってきた階段に向かいそのまま姿を消したのだった。
あれはきっと生きている人間だったと思う。
だがそれにしても、下手な幽霊に遭遇してしまう以上に恐ろしい体験だった。
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