
長編
真夜中の訪問者
匿名 2日前
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ざわざ音を出してそこにいる住人を叩き起こすわけがない。
(もしかして……、隣の人?)
そう考えてみても、面識のない人が夜中に急に訪ねてくるなんてことは非常識すぎる。百歩譲って、チャイムを鳴らすでもなく騒音を立てたことを許したとしても、やはり恐怖の対象であることには変わりない。
意を決して立ち上がった私は、静まり返った玄関へとゆっくりと歩み寄った。
モニターでも付いていれば良かったのだが、古すぎる物件には生憎とそんなハイテク技術は備わっていない。
私はそっと玄関扉に手を着くと、覗き穴から外の様子を伺った。
「……誰もいない」
小さくポツリと呟いた——その時。
———ドンドンドンドンドン!!
「ヒ……ッ!!」
再び大きく鳴り響いたその音に驚き、私はドスリとその場に尻もちをついた。
確かに誰も居ないと確認したばかりだというのに、覗いていた扉が激しく叩かれたのだ。
私はガクガクと震える身体で懸命に室内を這いずると、まだ微かな温もりの残っているベッドへと戻ると頭から布団を被った。
震える身体で携帯を開くと、助けを求めようと通話ボタンを開く。けれど、一体どこへ掛ければいいのだろうか……?
警察に掛けたとして、一体何て説明をすればいいのかわからなかった。
はたして、幽霊がいるので助けてくれと言って、それで来てくれるのだろうか?
かと言って、こんな時間に同僚や友達に電話をかけるなんて非常識すぎる。ましてや、幽霊がいるから助けてくれだなんて……そんな、にわかには信じがたい理由で。
こんな時でさえ妙に冷静な考えが頭を過ぎった私は、通話ボタンを閉じると携帯を握りしめた。
(お願い……っ。悪い夢なら、早く覚めて……)
一人でこの状況に耐えるという選択をした私は、ベッドの中でカタカタと震えながらひたすらに祈った。
その後、あの騒音が再び鳴り響くことはなかったが、その日は一睡もできずに夜を明かしたのだった。
◆◆◆
「本当にありがとう、里美」
「気にしなくて大丈夫だって。澪の家からの方が通勤も楽だし。むしろ、助かっちゃうくらいだから。……それより、ちゃんと寝た方がいいよ?」
「うん……」
あれから一週間。
毎日決まって2時23分に鳴り響く音に悩まされ続け、夜も眠れぬ日々を過ごしていた私。
そんな状況を見かねた同期の里美は、幽
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- 最初はゾクゾクして、どんなオチかな~と思いながら読んでましたけど、まさかの感動でしたね!(^^)直球