
幼少期の記憶が薄れかけていた冬のある日、僕と妹は親戚の家に泊まることになった。そこで待っていたのは、同い年の従兄弟、Yだった。彼とは一緒に遊ぶことが多く、毎年この時期を楽しみにしていた。
親戚の家は古い洋館で、薄暗い廊下やきしむ床が印象的だった。冬の寒さの中、僕たちは家の中で遊ぶことにした。外は冷たい風が吹き、雪が静かに降り積もっていた。
その日は、Yが鬼になってかくれんぼを始めた。僕と妹は、見つからないように隠れる場所を探し始める。大きな本棚の裏、階段下の物置、そして家の奥にある押入れに目が行った。
「ここ、どうかな?」
「いいと思う!」
押入れの襖を開けると、中には古い玩具が散らばっていた。僕たちはその中に身をひそめ、襖を閉めた。中は真っ暗で、周りの音も遠く感じられる。Yの足音が家の中を駆け回るのが聞こえた。
「もういい?」
「まだ!」
しばらく静かにしていると、突然、背後から何かが触れてきた。ぞわぞわとした感覚に驚き、思わず声を上げた。その瞬間、何かが僕の首に巻きついてきた。
「なにこれ!」
振り返ると、妹が怯えた顔をしていた。彼女の背後には、長い影があり、そこから細い腕が伸びてきていた。信じられない光景だった。妹は声を出せず、ただ助けを求めるように僕を見つめていた。
その腕は異常に強く、僕は必死に引き離そうとしたが、まるで生き物のように絡みついてくる。恐怖で心臓が高鳴り、冷や汗が流れた。
「離せ!」
その瞬間、押入れの襖が開いた。光が差し込むと、腕はすぐに妹から離れ、闇の中へと消えていった。驚きと恐怖で、僕はしばらく放心状態に陥った。
妹は泣きながら押入れから飛び出し、部屋の外へ駆けて行った。そこにはYがいて、彼は妹を心配そうに抱きしめていた。
親たちが帰ってくると、妹は泣きじゃくりながら事の次第を説明できなかった。僕は何も言えず、その場を見守っていた。結局、妹は家に帰ることになり、僕は一人、親戚の家に残ることにした。
それからというもの、僕は押入れのことを思い出すたびに、あの異様な腕のことが頭から離れなかった。Yとは二度とあの家で遊ぶことはなくなり、押入れはずっと閉ざされたままだった。
「誰もいないよね?」
その後、何度も押入れを開けようとしたが、開くことはなかった。静寂の中、ただ押入れの奥で何かが息を潜めているかのような感覚だけが残った。
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