
私の住む山奥の廃村には、「虫祈り地蔵」と呼ばれるお地蔵さんが存在します。
本来の名前は不明ですが、村人たちはいつの間にかこの名で呼ぶようになりました。最初は普通のお地蔵さんだったそうです。
しかし、村が経済的に困窮するにつれ、誰もお供え物をしなくなってしまいました。そんな中、幼い弟を持つ若い女性が、代わりに虫の死骸を供えるようになったのです。彼女にとってそれは、わずかながらの感謝の意でした。
彼女の弟は、時折病にかかることがあり、彼女は毎日お地蔵さんにお願いをしていました。弟が回復することを祈りながら、虫の死骸を供える日々が続きました。
ある晩、弟は奇跡的に病から回復しました。彼女は嬉しくてたまらなかったのですが、その数日後、弟が突然、嘔吐し始めたのです。驚いた彼女が見たのは、弟の口からこぼれ落ちる大量の虫の死骸でした。
弟はそれを見て驚愕し、気が狂ったように叫びました。その後、彼は衰弱し、まるで生気を失ったかのように、次第に痩せ細っていきました。村人たちは彼を見て恐れ、遠ざかっていきました。
そして、いつしか「虫祈り地蔵」に虫の死骸を供えることで、恨みを晴らすことができるという噂が立ちました。実際に人を呪った者がいたとも言われています。
ある日、私はその地蔵の前に、無数の昆虫の死骸が供えられているのを見ました。その瞬間、背筋が凍りつきました。供えた人は一体、誰を呪ったのか。そして、その相手はどうなったのか、今も気になって仕方ありません。彼らの祈りは、果たして誰に届いたのでしょうか? それとも、別の何かが目覚めてしまったのか。恐ろしいことです。
恐怖は、いつも私たちの目の前に潜んでいるのです。 彼らの祈りが、果たしてどこへ向かうのかと思うと、心が締め付けられます。
あの地蔵を見つめるたび、私はその恐ろしい力が目覚めないことを祈っています。
それでも、恐れずにはいられません。
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