
それは、子供が小学校に入学したばかりの頃の出来事でした。
当時、私たちが住んでいたのは、警備の厳重な高層マンションでした。
住民同士の交流はあまりなく、顔を合わせれば挨拶を交わす程度。しかし、同じフロアに住む男性が気になっていました。
彼は、40代で一人暮らしのようでしたが、常に白髪が目立つ印象を持っていました。
越してきた時、何か病気だと言っていた彼は、いつもパーカーを着て外出していました。その時間は、私の息子の登校時間と重なっていたため、しばしばオートロックの前で彼と出くわしました。
彼をAさんと呼ぶことにしましょう。
Aさんは物静かで、笑顔を見せることは少なかったのですが、挨拶をすると小さく頷いて返してくれたり、時には飴を息子に渡したりして、子供好きな様子でした。
いつの間にか、私たちは朝の時間以外でもAさんと顔を合わせることが増えていました。
その時はいつも、オートロックのドアを開けて待っているAさんの姿がありました。
最初は偶然だと思っていた私も、次第に不気味さを覚えるようになりました。親切なのに、なぜかぞわっとする感覚がありました。
夫に相談すると、彼も気になる点があったようで、注意するようアドバイスをもらいました。
ある日、家族で大きな買い物をした帰り、車を降りた夫が顔色を変えて言いました。「Aさんが窓からこっちを見て、何か呟いてる」と。
その瞬間、私は何かが腑に落ちました。なぜ、私が両手に荷物を持っている時だけAさんがドアを開けてくれるのか、それは偶然ではなく、私の荷物を確認した上での行動だと理解しました。
その日は夫がいたため、Aさんは出てこなかったのですが、後日、また大荷物を持って帰宅した時、Aさんが慌てて玄関から出てきてドアを開けてくれました。
その時、彼は裸足でした。
この瞬間、私は確信しました。Aさんは私たちの行動を監視しているのだと。
さらに疑問が浮かびました。「なぜ、息子が玄関先で私に大きな声で話しかける日ばかりAさんが出てくるのか。」
「なぜ、夫がいるとAさんは出てこないのか。」
何かが起こる前に行動すべきだと考え、引っ越しを決意しました。
引っ越し先を探している最中、事件が起こりました。
その日、義父が訪れていました。少し経ってから、忘れ物を取りに行くためにオートロックを通る際、私の鍵を渡しました。
義父はすぐに戻ってきましたが、オートロックを通過したことで気が緩み、家の鍵を締め忘れてしまったのです。
後日談:
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