
おじいさんは、漁師だった。
おばあさんと一緒に、仲良く暮らしていた。
そのおばあさんが、ある日急にいなくなった。
おじいさんが漁から帰ってきたら、家にいなかったのだ。
おじいさんは焦った。とりあえず警察に連絡した。
この家は海沿いの田舎だから、警察は何十分もかけてやって来た。
すごい形相で、おじいさんは話した。
とはいえ、あまりにも手がかりが少なく、警察は諦めた。
田舎の行方不明者を、手がかりがほとんど無い状態で探し回るほど、警察は暇じゃない。
おじいさんは怒ったし、悲しんだ。
でも、妻が生きていることを信じて、待つことにした。
おじいさんは、毎日家の近くを走り回って、妻の名を呼んでいた。
近くに、他の家がないから、おじいさんが走りながら泣き叫んでいることは、誰も知らなかった。
そんな苦しい日々であったが、ある日、おじいさんは思い出した。
娘の友だちの叔母は霊媒師だ。
せめて、妻が生きているかどうかは教えてもらいたい。
そう思って、娘の家を訪ねることにした。
娘は、おばあさんと仲が良かったから、おじいさんの話を聞いてとても悲しんだ。
その2日後、おじいさん、娘、娘の友達が霊媒師に会いに行った。
「あのね、海にいるよ。海の真ん中。靴がないから戻ってこれないと言っている。」
霊媒師は言った。
私の妻は死んだのか。
おじいさんは辛かった。でも、妻の状況を教えてくれたことに感謝した。
家に戻ったおじいさんは、どうすればいいか考えた。
靴、靴、...。
海に靴を投げれば良いんだ! そうおじいさんは考えた。
おばあさんがいなくなったとき、家の靴は1つもなくなっていなかった。
つまり、おばあさんは裸足でいなくなったのだ。
おばあさんは、赤いサンダルを持っていた。とても大切に、長い間使っていた。
その靴を履いて、おばあさんは返ってくるのではないか。
おじいさんはそのサンダルを持って、舟を出した。
沖からだいぶ離れたところに着いた。
おじいさんは、真剣に方角を選んだ。
そして、北東に向けて、力いっぱいサンダルを投げた。
しばらく何も起こらなかった。
おじいさんは今更不安になって、サンダルを投げた方に舟を進めた。
そして、サンダルが沈んだあたりの海底をのぞいて、ゾッとした。
黒い影。人だ。人が沈んでいる。
息を呑んだ。しばらく動けなかった。
しかし、おじいさんは考えた。これは妻かもしれないと。
そして、決断した。
網を使って、引き上げる。
体は傷だらけで、髪の毛もほとんどなかった。
でも、この顔はおばあさんだ。
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