
冬の深夜、築30年の古いマンションに暮らすことになった。新人デザイナーの俺は、手頃な物件を探していた。狭いユニットバスと薄い壁が特徴のその部屋は、隣の住人の笑い声さえ聞こえてくるほどだったが、日中は仕事で忙しかったので、特に気にはしていなかった。
しかし、ある晩、部屋に入ると何か違和感を覚えた。まるで目に見えない糸に引っ張られているような感触が、頬を撫でる。最初は寒さのせいだと思ったが、毎回同じように感じるのだ。
その違和感が気になり始め、ある日、同僚の二人を招いて飲み会を開くことになった。話題がいつの間にか俺のアパートのことになり、「見に行きたい」と言われて、気乗りしないまま招待した。到着した同僚の一人は、部屋を見て「予想以上に古いな」と笑う。
もう一人は、何かぼんやりした様子で部屋を眺めていた。「入れよ」と声をかけても、彼は無表情でいる。靴を脱いで上がるとき、まるで酔っ払ったかのように千鳥足だった。
飲み会が終わり、外に出て喋っていると、彼が突然「お前んち、変な噂ない?」と尋ねてきた。驚いて「噂なんかないよ」と答えると、彼は「部屋に女の霊がいるって聞いたけど」と続けた。笑い飛ばす同僚の横で、俺は心臓がドキリとする。
「だってさ、女の髪の毛が凄い長いんだろ?」と彼が言う。瞬間、俺は思い出した。毎回感じていた違和感。それは彼が言っていた長い髪の毛だったのだ。まさか、俺の頬に触れていたのはその霊のものだったのか。
急に恐怖が押し寄せ、俺は「やめろよ、そんなこと言うな」と言った。しかし、同僚たちはタクシーが来たので、バイバイと去っていった。独り残された俺は、心臓がバクバクし、すぐに荷物をまとめて外に出た。
その後、急いで新しいマンションを探し、引っ越しをしたが、時折その古いマンションを思い出す。最近、散歩中にそのマンションの前を通りかかったが、やはりまだ存在していた。誰かが住んでいるのだろうか。もし首を吊った女と同居しているのを知ったら、彼らはどう反応するのだろうか。結局、それは俺が知る必要のないことだ。
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