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長編

ううん、いたよ。

ボク 2021年5月5日
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これは私が車の免許を取り立ての頃の話。 たしか18歳の夏頃だった。 地元の友達の中で車の免許を取ったのが私が一番早かった。するとどうなるか? 案の定、親の車を借りて皆で遊びに行こーってなったんだ。 私の家は8人乗りのワンボックスカーを所有しており、その日は私と友人7人の計8人でドライブに行く事になった。 この日は土晩という事もあり、集合した時間は23時ぐらいで遅かった。時間も時間だし遊びに行ける場所は限られている。 ボーリングやカラオケはちょっと違うなとなった私達は心霊スポット巡りをする事に決めた。 ネットで検索すると複数の有名心霊スポットが出てくる。どれもトンネルや池、神社や墓地といった定番っちゃ定番のものばかりで、あまり盛り上がらない。 そこで友人の一人が 「ここはどう?」と携帯の画面をこちらへ向けた。 友人が提案した心霊スポットはただの一軒家だった。この家で家族が一家心中したという。 他の友人は「それも定番じゃね!?」と笑っていたが、時間がもったいないので私達はその一家心中のあったと言われる一軒家へと向かう事にした。 ナビをセットし目的地をみると、どうやらその一軒家はわりと山手の方にあるらしく、山道を通らないと到着できそうもない。 私は道が細くない事を願いながら車を進める。もし擦ったりでもしたらもう車を借りられなくなる。 だが私の思いとは裏腹に、山道はある程度の幅員があり、スムーズに車を進める事ができた。 そろそろか?と思った時、私達の目の前に古びた一軒家が現れた。 「これか?」 私が助手席の友人に聞くと、友人は携帯の写真を見ながら「うん、これっぽいね」と言った。 見た感じはどこにでもあるただの一軒家の廃屋。 正直怖さを感じなかった。 まぁロケーションが深夜の山奥ってとこが少し不気味だったぐらいだ。 車のエンジンを切ると、街灯も何もない山奥なので何も見えない。だから私は車を方向転換させ、廃屋の正面に向けた。そしてエンジンを掛けたまま、ヘッドライトを点けて廃屋を照らす事にした。 しばらく友人らと車のヘッドライトでライトアップされている廃屋を眺めていたが、すぐに飽きた。 そこで友人の一人が「中入ろうぜ」と提案した。 私達は特に誰も怖がる事なく、すんなり建物へと入った。 携帯のライトを頼りに8人で一階と二階を探検したが、特に何も見つからなかった。もちろん8人とも霊感なんて一切持ち合わせていない。 「なーんだ。やっぱ何も出ねーな」 「てかこの人数じゃ怖いもんも怖くなくなるなw」 「あー、お化け見てみたかったな〰️」 私達は各々愚痴をこぼしながら建物を出た。 そしてエンジンを掛けたままの車へ全員が乗り込んだ。 すると二列目の左のドア側に座っていた友人が私に向かって 「なぁ、ドア閉まらねーけど…」と言った。 それを聞いていた車中の全員が笑った。 「もういいってそういうのw」 「そういうのやるなら建物の中でやれよw」 という具合に大笑いだった。 だがドアに手を掛けたままの友人は私の顔を見ながら表情に焦りを浮かべている。 「いや、うちの車のドアは自動だから軽く取っ手部分をクイッとしたら閉まるぞ。てかお前何回も開け閉めしてんだろーが」 「うん、だけど閉まらねーんだよ!ほら!」 そしてドアの取っ手に手を掛けた友人は、カチャカチャと何度も取っ手を動かした。 「壊れたんじゃねーの?」 助手席の友人が言う。 「そんな訳ねぇーだろ?ったく、何やってんだよ」 「自動モードが手動になってんじゃない?」 三列目に座っていた友人が言った。 「え?なに?そんなモードあんの?」 「あるあるwてかお前そんな事も知らねーのかよw」 「うっせーwwそんでどこだよ?そのモード切り替えのボタンは」 私はそれらしいマークのスイッチを見つけた。 「おしっ!どう?」 「全然だめ。自動と手動に関係なくドアが動かねぇわ」と友人が言った。 「動かないってなんだよ!そんな事今まで1回も無かったぞ!」 友人は何度もスライドドアを閉めようと、力ずくでドアを引いていたがビクともしなかった。 「壊す気で思っきりいけ!」 「もうやってるよ!」 「なんなんだよそれ!w」 こんな心霊スポットの真ん前でコントみたいな事をしている自分達に笑えてきた。 すると助手席の友人がしびれを切らして 「辛気臭ぇわ!俺が外から閉めてやる」 そして助手席から外へ出て外からスライドドアを引く。 だが何かに引っ掛かった様にドアはビクともしなかった。 「なっ?閉まらねぇだろ?」 「うっせぇよ、てかお前ら服とかカバン挟んでねぇーか?」 「大丈夫」 「ちっ」 そして助手席の友人は何度かドア引いたが、結局閉まらなかった。 他の友人は飽きたらしく携帯を見たり、話し出したりし始めた。私は自分の家の車なのでドアが閉まらないのが気が気でない。 すると助手席の友人がふと思い出したかのように手を止めると、突然体を屈めて車の下を覗き込んだ。 あれ?っと思ったと同時に、友人は体を起こし思いっきりドアを閉めた。 バァァァンッ!という音によそ見していた友人が見事に全員跳ね上がる様に驚いた。 「お!閉まったじゃん!」 そして助手席の友人も汗だくではあったが車へと乗り込み「はよ出せ」と言いい、私達はその場を後にした。 私は友人を1人ずつ家まで送り、最後が助手席の友人だった。 2人で今日の他愛のない話をしていたら、ふと思い出した。 なぜあの時こいつは車の下を覗き込んだんだろう? 私は何となく友人に聞いてみた。 「てかさ、よくドア閉めれたな!それと何で一度車の下を覗き込んだんだ?」 「え?」 友人は少し驚いていたが、 「いや、お前最後ドアを閉める前に一回下覗き込んだだろ?」 「あぁー、あれね。見てたんだ」 「見てたよ。で、あれ何だったんだ?もしかして下に何かいた?…ってそんな訳ねぇよなw」 すると友人は何のためらいもなく答えた。 「ううん、いたよ」 「は?」

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