
高校生活最後の文化祭が終わり、私たちはバスに乗り込んで帰路についた。外は夕暮れの薄暗さが広がり、疲れた顔をした友人たちは次々と眠りに落ちていく。私は前の方の席に座り、担任の先生の背中を見つめていた。先生は夢中になって窓の外を見ているようだった。何を見ているのか気になり、少し身を乗り出して覗いてみた。すると、遠くの建物の屋上に、人影が見えた。近くも遠くもない絶妙な距離感で、じっとこちらを見つめているような気がした。
その瞬間、私の心臓が大きく跳ねた。なぜかその人影には不気味なものを感じた。周囲は静まり返っていて、バスのエンジン音だけが響いている。周りの友人たちはほとんどが夢の中、担任も声を発することはなかった。ただ、人影だけが私の視線を引き寄せていた。
次の瞬間、先生が急に笑い出した。驚いて目をそらすと、私は無意識に目を閉じてしまった。どれくらいの時間が経ったのだろう。目を開けると、もうバスは見慣れた場所を走っていた。皆が静かに眠る中、私だけが異様な気持ちを抱えていた。
自宅に着くと、私はその影のことを思い出していた。あの人影は何だったのか、なぜあんなに不気味だったのか。心のどこかで、思い出したくない感情が渦巻いていた。すると、担任の先生が私の肩に手を置き、優しい声で言った。「文化祭を楽しんでくれて嬉しいよ。」その瞬間、私の脳裏にあの人影の顔が浮かんだ。泣いていた。あの人影が泣いていた姿が、鮮明に思い出された。
これはただの予感ではない。あの影が私の目の前にいるなんて、考えたくもなかった。どうして担任が私たちをあんなに褒めていたのか、その理由を私は知っている。私だけが、あの人影の存在を理解していたのだから。彼女が泣いていた理由も、きっと。私の心に、いつまでも消えない影を残して。
バスの帰り道で見たあの影は、単なる幻ではなかったのかもしれない。今もなお、私を見つめているのかもしれない。
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