
「ねえ、図書館の地下にある本、知ってる?」
友人が話しかけてきたのは、秋の肌寒い夜のことだった。彼は、大学の古い図書館の地下室に隠された本について興味を持っていた。噂によれば、その本には古い童謡が収められており、歌うことで不思議な体験ができるというものだった。
「その童謡、確か『消えた影』ってやつだよね。」
「そう、実はその歌には呪いがかけられているって言われているんだ。歌うと、何かが起こるらしい。」
興味をそそられ、私たちは地下室に向かった。薄暗い空間には、埃をかぶった本が無造作に並んでいた。友人が一冊の本を取り出し、歌詞を見せてくれた。
『消えた影、遠くまで飛んだ。影が消えて、何もかも失った。』
その歌詞を眺めていると、何とも言えない不安感が胸を締め付けてきた。友人は、私に歌うように促した。「どうせなら、一緒に歌おうよ。」
不安を振り払い、私たちは声を合わせて歌い始めた。歌うごとに、周囲の空気が変わっていくのを感じた。声が響くほど、図書館の灯りが一瞬消え、薄暗い空間に不気味な静けさが広がった。
歌が終わると、友人は顔色を変えた。「おかしい…何かがいる。」
その瞬間、彼の後ろに黒い影が現れた。影はまるで彼を引きずり込もうとするかのように、徐々に近づいてきた。私の心臓は早鐘のように鳴り、恐怖が全身を支配した。
「逃げよう!」
私たちは急いで図書館を飛び出したが、影はいつの間にか消えていた。しかし、友人の姿が見当たらない。振り返ると、彼はその場に立ち尽くし、無表情で影を見つめていた。「お前は、消えた影だ。」
その言葉を最後に、彼は静かに消えてしまった。私は、その後も何度も図書館を訪れたが、友人の姿を見ることはなかった。あの歌が、彼を連れ去ったのかもしれない。
「あなたにお気に入りのウツ曲はありますか?」その質問が、今も頭の中で響いている。
歌は時に、人を引き寄せる力を持つが、同時に恐ろしいものを呼び寄せることもある。私たちが無邪気に歌った歌が、どれほどの力を持っているのか、理解することができた。
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