
長編
無題
( ・ㅂ・)و ̑̑ 3日前
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おり、一見するとどこにでもいるサラリーマンなのですが、何故かその男は裸足なのでした。
いわゆる『左巻き』の人であろうと考えた彼はその男を無視し、その日は朝からバイトでしたので支度をし、家を出ました。
出かけるついでにその通りを通ってみることにしたのですが、男の姿は見えません。安心した彼はそのままバイトへと出かけました。
家に帰った彼が部屋の電気をつけ、カーテンを閉めようと何気なく窓の外を見ると、通りの街灯の下にまたあの男がいたのです。おまけに、今度はこちらの方をじっと生気のない目で見つめていたのでした。
怖くなった彼はその日はそのままいわゆる「寝逃げ」をしたのですが、朝になってもカーテンを開けることはしませんでした。
そのまま数日の間彼は一度もカーテンを開けずに、しかしバイトに出かける度に件の通りを通るのですが、男の姿はどこにもありません。どうやらその男は彼の部屋からでないと見えないらしい、と彼は考えるようになりました。
初めて男を見かけてからちょうど3週間経ったその日の朝、彼は思いきってカーテンを開けました。
果たしてその男は通りの真ん中で、やはりこちらを見つめていました。やはりあの生気のない目で。
その時彼は、男の口がずっと動いていることに気付きました。絶え間なく、何度も何度も同じ言葉を繰り返し、噛み締めるように呟いているようにも見えました。
読唇術なんて身につけているわけがない彼は男の呟く内容がわかりません。気味が悪くなり、カーテンを閉めます。
それからというもの、彼は毎朝男の存在を確認すると、必死で唇の動きを読み取ろうとしました。そうは言えども、たいして目が良いわけでもない彼はにはそれは至難の業でした。
そんなある日、とうとう彼はある発想に辿り着いたのです。
それ即ち、
「この窓から外に出れば、男を見失わずに男の側まで行けるのではないか」
という単純で、なぜ今まで思い付かなかったのか不思議になるほどのものでした。
男は早速窓を開け、窓から外に出ようとしました。その瞬間、彼はある妄想に取り憑かれたのです。
「自分がこの窓から下に飛び降りたとき、果たして自分は無事でいられるだろうか?」
たかが二階の窓から落ちたくらいで死ぬことはないだろう、と彼は夏目漱石のとある小説を思い出して考えたのですが、なぜかその考えが頭を離れません。自分がこの窓から飛び降りたとき、何か取り返しのつかないことになる、と本能が知らせていた
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- 何だか面倒くさい人。K