
長編
見知らぬ女性
匿名 2016年10月31日
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時系列的には、お姉ちゃんの話と通り道の話の後のはなしです。
季節は冬になり、地域的に寝る前に水を落として寝なくては水道管が凍結してしまう時期。その頃に異変が始まった。父の様子がおかしくなっていった。当時は母が亡くなった悲しみで、お酒を飲んでいるせいだと思っていた。
簡単に間取りを説明しておきます。二階建ての二階に私と父の居住スペース。リビングの扉から階段や部屋に繋がる廊下があり、右手にトイレ、風呂。左手に父の寝室、突き当たりに私と兄の部屋がそれぞれあります。1階には祖母の居住スペースがあります。二世帯住宅の様な感じです。
この頃は兄は失踪中。新しい家には私、父、祖母の3人で暮らしてました。
その日は仕事が休みで父は昼からお酒を飲んでいたという。私は学校、祖母は1階。兄は失踪中。二階には父しか居ないはずが、誰かの気配がする。お酒のせいだと思ってた。嫌な気配は消えず、家にいる気にもなれず、同じく休みの友人の家に手土産を持ち出掛け、その日友人宅にて転倒し、左手を骨折。利き手では無いものの、左手も使う仕事だった為、仕事が出来なくなった。
父の手は不格好になった。そのうち治ると言われ続けていたが、痛みも引かず、ぼこんと不自然に出っ張った腕。昔から信頼していた医師だったが、別の病院へ行くと「どうしてこんな事になったかわからない。」と言われた。入院し、手術。不自然な出っ張りはなくなったものの仕事に戻ることは出来なかった。
退院し、家に戻った父は昼からお酒を飲むようになった。晩御飯を食べていた時だった。
父「変な事聞いていいか?」
私「何?」
父「家に他に誰かいないか?」
私「…と、いうと?」
父「1人の時に誰かいる気配がするんだ。」
私「ばあちゃんじゃないの?」(祖母はそっと様子を見に来ることがあった)
父「最初はそうだと思ったんだけどな…内線で婆さんと話してる時に、人影を見たんだよ。」
私「やめてよ!気持ち悪いじゃん!」
その場は気のせいでしょ。とすましていた。父はこの頃、夜に呑みに出掛ける様になっていた為、怖かったのだ。
その日の夜。父は呑みに出掛けていた。トイレに行きたくなり、トイレへ。部屋に戻り扉を閉める瞬間、白いワンピース姿の女の人を見た。冬に似つかわしくないノースリーブのワンピースに、ロングヘアーだった。泥棒だ!!とっさに思った。普通に考えてそんな格好で泥棒に来るわけないんだけど。その時は何故かそう思ってた。
緊張した異様な空気のなか布団に潜り込みじっと息を潜めていた。しばらくして、部屋の中を歩き回る様な気配がする。
1階には祖母はいるが、高齢の為無理はさせられない。1人で何とかしなくてわ!と、思っても怖い。布団の隙間から覗くと先程の女の人のようで、青白い手を見た。そこで気づいてしまった。入ってきたなら、扉の音がするはず。ソレがしなかった。しかも、足音していない。いくら静かに歩いても、布スレの音くらいするはずがしない。
一気に恐怖が違うものに変わった。動き回る気配が真横でとまる。ヤバイ!と思った瞬間、バチンっと何か弾けるような音がした。その後間もなく「チッ」舌打ちが聞こえて、気配が消えた。しかし、怖くて布団に潜ったまま、気づくと寝ていたのか朝になっていた。
父に昨晩の話をした所、実はあの話をされた時には父も女の人の姿を見ており、話すと怖がらせると黙っていたらしい。祖母にも気を付ける様にと話をしたら、ブレスレット型の数珠を貰った。
それから、丁度一ヶ月位たった頃、父はなにかに怯えはじめた。幻覚だと思っていた。学校から帰るとリビングの扉を必死に押さえ、何かを出さないようにしていた。私には見えず何も居ないことを告げると、怒りだし、中に入って見ろ!と、リビングに入れられる。
やはり何も無い。何も無いじゃん!と、怒るとはっとしたように落ち着いた。似たような事が数回続き、私が帰るとソレは落ち着く様だった。
そしてほどなくして、学校から帰ると父は吐血して倒れていた。救急車を呼んだが、既に亡くなっていた。
葬儀がすみ、落ち着いた頃。夜に息苦しさを覚え目が覚める。目の前には顔の見えぬあの白いワンピース姿の女の人が私の首をしめていた。何か話しているが聞き取れない。何かを探すように言われている様だが、はっきりとはわからず、苦しいのと恐怖で必死に「貴方の望みは私では叶えられません!ごめんなさい!」と心の中で繰り返しました。
バチン。また、何か弾けるような音と共に、首への締め付けがとけ、女の人が消えた。そのまま気を失ったのか、目覚めると朝だった。
それから数ヶ月後、祖母も幻覚を見始め、伯父はぼけてしまったのだと老後施設へ祖母を入れてしまった。
それから数年後、祖母も他界。祖母は老衰だったと思う。ただ、最後まで実在しない病院の先生とやらの息子と、私の見合い話をしていた。
そして、祖母の葬儀も落ち着いた頃、失踪中だった兄が帰ってきた。そして、あの時お姉ちゃんに言われた言葉を思い出したのだ。
「私ちゃんとお兄ちゃんは助けられたけど…ごめんね。」
お姉ちゃんは、あの女の人から守ってくれたのでしょうか?
後日談:
- 実話です。身バレ防止で時系列変えてます。矛盾あったらゴメンなさい。見逃して下さい。
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