
大したオチはない。
本当に体験した話。
俺がまだ小学校低学年の時の命を拾われた話。
夏休みが終わるちょうど一週間前だったと思う。
その日、友達といつものように近所の公園に集まった。
午前中はDSに熱中して、昼には各々コンビニ飯とかお母さんに作ってもらった弁当を食べた。
午後はケイドロがお決まりだった。
缶蹴りとかだるまさんが転んだも相当楽しかったが、何よりケイドロが楽しかった。
それもそのはずだ。
俺らがいつも遊んでいた公園は雑木林を上っていったところにある開けた広場みたいな所。
ケイドロとか鬼ごっことかの範囲はその雑木林の中だった。
たいした大きさはないが、その高低差が俺らの心に刺さった。
立体的な地形はケイドロに普通の公園以上の「戦略」を生んだ。
この日もケイドロをやった。
「じゃんけんぽん!しゃぁぁあドロボウだ!」
友達が咆哮する。
俺はケイサツとして追い回すことになった。
あるあるだが、大抵のケイドロはケイサツが有利だったりするよな。
一人足の遅い奴を捕まえて檻で出待ち。こんな程度で面白くない。
逆にみんな足が早くて誰も捕まえられないなんてこともあるが。
俺らのケイドロは高低差を利用するから足の速さではなく、いかに相手に気づかれないかとか上手くポジションをとるのが重要だった。
俺は逃げるのが上手いみんなを相手に捕まえあぐねる。
この雑木林の横には川が流れている。
深くもないし、大きくもない。
小川よりは大きいくらいの川。
ドロボウの友達が川のそばの木の影に息を潜めているらしかった。
かれこれ10分ぐらい膠着状態だった。
俺は焦燥に駆られていた。
小学生特有のプライドの高さはこの勝負に負けることを許さなかった。
俺は川をまわって急襲を試みた。
が、俺は足を滑らせて川へ落ちた。
浅く溺れる方が難しいぐらいの川だ。
しかし3メートルぐらいの滝のような段々があり、段の下側は少しだけ深かったと思う。
運悪くそこに落ちたらしい。
この辺りはあまり覚えていないが、溺れた。
泳ぎが苦手で、水泳の授業も見学しがちだった。
俺は確かに溺れた。
焦っていたと思う。
水が降り注ぐからわけも分からなくなって。
溺れた。
気がつくと、見覚えのある天井だった。
そう、俺は家の寝室にいた。
しかも朝。
リビングにあがると、
「おはよう」
お母さんが、いつもと変わらず佇む。
寝ぼけ眼には違う女性が写った。
これは気のせいだった。
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