
長編
夢か幽霊か宇宙人か・・・
ショートラウンド 2019年3月12日
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夢だったのか、幽霊だったのか、それとも宇宙人の仕業か・・・
20年くらい前、私が小学校低学年だったときに体験した話です。
学校が終わり、近所の公園で友達数人と遊んでいました。
日も暮れてきて、夕焼け空の中「帰るねー」と言って帰る子もいれば、
お母さんが迎えに来て帰る子もいました。
人数も少なくなった頃、私の父、母、兄が総出でお迎えに来たのです。
まだ何人か友人が残っていたと思うのですが、私が「じゃあね!」
と公園を振り返ると、誰も居ませんでした。
仕事でいつも遅い父、パートで私の帰宅より少し遅く帰ってくる母、
私と同じで遅めまで遊ぶ兄、その3人が迎えに来たこと、
そして、公園に誰も居なくなっていたこと。
幼心に不安な気持ちになっていたと記憶しています。
家に帰ると、早速母が料理を出してくれました。
からあげやハンバーグ等、子供が好きな食べ物ばかりだったと思います。
みんなで「いだだきます。」の後、母が「この後デザートもあるよ」とか、
兄も「俺のからあげあげるよ」とか、父も「休みに遊園地行こう」とか、
機嫌がいいのか、なぜか私の喜ぶことばかり言ってきました。
幼かった私は、公園の帰り道の不安など既に無くなり、調子に乗っていたと思います。
しばらくして「トイレ」と言って席を立ちました。
うちの実家のトイレは、外側からでも1円玉や固めの針金みたいなものがあれば、
ドアノブの中心のくぼみに引っ掛けて、鍵を閉めることができます。
私は、外からトイレの鍵を閉めて、向かいの脱衣所の床下収納に隠れ、
みんなが慌ててトイレに来たところに、ジャジャーンと登場!
そんなイタズラをしようとしていました。
早速、トイレの鍵を閉めて、音を立てないよう、床下収納に入りました。
どれくらい時間がたったのか、床下収納の中なので、ちゃんと聞き取れないのですが、
リビングからボソボソと会話が聞こえました。
たぶん「遅くないか?」とか「大丈夫かな?」とか言っているのだと想像し、
1人ニヤニヤして、体を丸くしていました。
ただ、日本語のイントネーションと違うというのか、普段聞きなじまないリズムで、
声色も普段と違うと疑問に感じていたと記憶しています。
それからまもなく、ドタドタとリビングから大勢の人が出てくる音がして、
トイレのドアをコンコン。と叩く音が聞こえました。
父、母、兄の3人より、もっと多くの人数の足音に感じていたと記憶しています。
コンコン。とノックをしても返事はありません。
また、コンコン。
またまたコンコン。
当然、返事はありません。
すると、コンコン。「この後デザートもあるよ」と母の声
その後、コンコン。「俺のからあげあげるよ」と兄の声
またその後、コンコン。「休みに遊園地に行こう」と父の声
食事中とまったく同じことを言って、トイレをノックし続けていたのです。
私は怖くなり、収納から出ることが出来なくなりました。
たぶん涙目で震えていたと思います。
ノックの音が、コンコン。からドンドン!に強さが変わり
ドンドン!「この後デザートもあるよ」
ドンドン!「俺のからあげあげるよ」
ドンドン!「休みに遊園地に行こう」
ノックからドアノブをカチャガチャとする音も加わり、
ドンドン!ガチャガチャ!「この後デザートもあるよ」
ドンドン!ガチャガチャ!「俺のからあげあげるよ」
ドンドン!ガチャガチャ!「休みに遊園地に行こう」
声も、録音したものをずっと流しているように、大きさ、強弱がまったく同じでした。
私は声を出さないよう、音を出さないよう必死でした。
そして、バキ!っと音がしました。
たぶんトイレの鍵が壊れて、ドアが開いたのでしょう。
しばらく沈黙が続きました。
そのあと、「この後デザートあるよ」「俺のからあげあげるよ」
「休みの遊園地に行こう」を連呼しながら、大人数が家の中をドタドタと
小走りする音が響きました。
もう訳が分からない状態でした。
ひとしきり、1階を歩き回ったのか、次はドタドタと階段を上がっていく音
私は、もう今しかない!と収納の蓋を開け、裸足で外に飛び出しました。
ちょうど家の前で、友達とバイバイ!と言っている兄に会いました。
私は大泣きしながら、兄に飛びつきました。
それから、兄を家に入れないよう、大泣きしながら「家に入っちゃダメ!」と叫び
兄を止めていました。
訳の分からない兄は、呆然としていたと思います。
そこに母が帰ってきました。
泣き叫ぶ私、呆然と立ちすくむ兄
母もどうしたの!?と駆け寄ってきました。
私は、さっきまでのことを、どう説明したら分からず「家に入っちゃダメ!」
しか言ってなかったと思います。
それから、母に慰められ、母、兄と一緒に家に入りました。
私は母にしがみついていました。
トイレのドアが開いていました。
鍵は壊れていなかったようです。
母が扉を閉めました。
リビングには、さっきまで並んでいた料理はありませんでした。
2階の部屋に戻っていた兄が、降りてきて、アニメを見ていました。
たぶん、あいつ達はいなくなったのでしょう・・・
しばらくして落ち着いてきた私は、母に説明しました。
母には「怖い夢でも見たんじゃない?」と本気してもらえませんでした。
今でも、よく当時のことを思い出します。
ただ、偽者の家族の表情、出された料理を食べたのかどうか。そして公園で誰と遊んでいたのか。
そこが全く思い出せません。
本当に夢だったのか、もしイタズラせず、そのまま一家だんらんしていたらどうなっていたのか
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