
短編
にいちゃんの坂
匿名 2日前
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俺が子供の頃の話だから、50年以上前になる。
俺は山に囲まれた町に住んでいた。
俺の町から西の山に続く道には、林に囲まれた昼でも薄暗いカーブの坂道があった。
ここは急な坂の見通しの悪いところだから、前に車で轢かれた子供がいるとか、夜一人で歩いていると何者かに襲われるなどの噂がたっていた。
そんなある日のこと、俺は肝試しのつもりでこの坂道を歩いて登ってみた。
まだ昼の3時頃だったが、林の中は夕方のように薄暗かった。
そして、坂道の途中まできたころ
「・・に・・ちゃん・・!」
謎の声が聞こえてきた。
立ち止まりあたりを見渡しても誰もいないし、何も聞こえない。
俺は空耳かなと思って歩き出すと、
「・・にいちゃん、にいちゃん・・」
確かに聞こえた。
男か女か分からない囁くような声だが、何者かが「にいちゃん」と言っている。
立ち止まるとまた声が止まる。
歩き出すと、また聞こえる。
歩く俺を追いかけるように。
俺が早足になると、謎の声も早くなる。
俺は怖くなって山道を駆け降りて、家に向かった。
「にいちゃん、にいちゃん・・」
という声はずっと追いかけてきた。
そして俺はやっとの思いで家にもどり、両親のいる居間を見ると安心した。
少し落ち着いたころ、玄関の靴を戻しに行くと、靴を持ち上げた瞬間、また聞こえた!
「にいちゃん」
という声が!
・・だが、気づいてしまった。
「にいちゃん」という声は、靴の裏についたチューインガムが地面で擦れて、
ニチャ・・ニチャ・・
と、音がしているだけだった。
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- 俺、俺、俺、俺あー