
美月が奈々と仲良くなったの、マジで一瞬だった。転校してきて二日目で、もう一緒にトイレ行ってる。昼休みも、私が「購買行こ」って言う前に、奈々が美月の腕引いて連れてく。
前まで、そういうの私だったのに。
「最近さ、奈々とばっかじゃん」って言ったら、美月は「え、普通に仲いいだけ」って笑った。笑って終わり。こっちの話をちゃんと聞く気がない笑い方。
その日から、私も“普通に”やることにした。
まず、奈々のことを全部知る。インスタのフォロー欄、ストーリーのタグ、誰と写真撮ってるか。奈々が好きな曲、好きな飲み物、どの時間に購買に行くか。美月が見てないときに、奈々がどんな顔してるか。
奈々って、目立つタイプじゃないふりして、ちゃんと目立ちたい人だった。先生に「手伝います」って言う声だけ大きいし、男子が笑ったら一回だけチラ見する。そういうの全部、見えた。
私がやったのは、ちょっとした“空気”だけ。
「奈々って、前の学校で揉めたらしいよ」
「え、聞いた。なんかやばいって」
って、仲いい子に言う。大声じゃない。あくまで“みんな知ってる”みたいなテンション。
次の日から、奈々の周りだけ会話が途切れるようになった。席が近い子が、ちょっと距離取る。グループLINEでも、奈々が送ったスタンプだけ既読つくの遅い。
奈々は気づいてる。気づいてるのに、笑ってる。だからムカつく。
放課後、廊下で奈々が美月に「一緒に帰ろ」って言ってた。美月が迷って、私の方を見た。そこで私、笑った。
「いいよ、行ってきな」って。
美月の顔がほっとした。私が“許した”って思った顔。
その瞬間、決まった。
次の日、美月は私に戻ってきた。奈々が話しかけても、返事が短い。奈々が隣に座ろうとすると、机をちょっとずらす。美月がやってるのに、周りは「奈々が空気読めない」って言う。勝手にそうなる。私は何もしてない顔でいられる。
奈々は昼休み、トイレで吐いてた。泣き声じゃなくて、吐く音。ドアの向こうで、息が細い。私は手を洗いながら聞いてた。長く。ちゃんと。
その日、奈々は早退した。次の日も来ない。先生は「体調」って言った。みんな「そっか」って言った。美月は何も言わなかった。私の方を見て笑っただけ。
帰り道、美月が言った。
「やっぱ一番落ち着くの、あんただわ」
嬉しいのに、なんか寒い。だって、落ち着くって言い方、必要だから一緒にいるって意味じゃん。
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