
私は普段、街中を駆け巡るためにスクーターを愛用していた。ある秋の昼、仕事のために出発しようとしたとき、スクーターのサイドミラーが不自然に曲がっているのに気づいた。普段なら気にも留めないが、何となく気味が悪いと感じ、直してから出かけることにした。
最初の仕事を終え、駐車場に戻ると、またしてもミラーがずれている。風でも吹いたのかと思ったが、気にせず次の仕事先へと向かった。昼食は久しぶりにカフェで取ることにし、スクーターに乗ると、またミラーが曲がっていた。
“今日は変な日だな。”と感じつつ、左のミラーを覗き込むと、そこには真っ黒な影のようなものが映っていた。驚いて身を引き、心臓がドキリとする。運転するのが怖くなり、午後の仕事先にはタクシーで向かうことにした。
仕事を終えて事務所に戻ると、スクーターのことが気になり、同僚に話してみた。彼は笑いながらも、たまたま近くに住んでいる彼が、そのスクーターを明日の通勤に使うことになった。
心配しつつも、翌朝を迎えた。出勤時間前に同僚を待っていると、彼が顔色を悪くして到着した。様子を尋ねると、なんと昨日の夜、スクーターに乗って事故に遭う夢を見たという。
彼はそのスクーターが過去に事故車であったことを指摘し、夢の中での映像を話し始めた。縁石に乗り上げ、草むらに突っ込む様子が見えたらしい。スクーターのフロントには、確かに何かに当たった痕跡がいくつもあった。
その結果、すぐさまこのスクーターは業者に引き取られ、帰宅したときにはもう事務所にはなかった。新しい持ち主に渡ることになったが、彼が無事であることを願うばかりだった。あの黒い影が、再び誰かの夢に現れないことを祈る。
何もなければいいが、心の奥には不安が残っていた。何かが、まだこのスクーターに宿っているのではないかと。
この出来事が、何かの前触れでなければいいと、ただ願うばかりだった。
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