
冬の深夜、古民家の玄関がドンドンと叩かれた。
眠りを妨げられた私は、身震いしながらも音の正体を確かめるべく、ゆっくりと廊下を進んだ。
ドアの前で立ち止まり、心臓が高鳴る中、ドアスコープを覗く。しかし、外は暗闇に包まれ、何も見えなかった。
静寂に包まれた山間の家は、周囲の音も吸収しているのか、叩く音だけが響き渡る。
その音は止むことを知らず、まるで誰かが私を待ち構えているかのように、しつこく続いた。
開ける勇気はなかったが、無視することもできず、私はただその場でじっとしていた。
しばらくして音が止んだが、外に人がいる気配はなかった。警察に通報することも考えたが、山奥での騒ぎは近隣に迷惑をかけるだろうと躊躇した。
そのまま、恐怖に苛まれたまま朝を迎えた。
外からはパトカーのサイレンが聞こえてきた。
どうやら近くの家で、何か事件があったようだ。
隣の家の住人が逮捕されたというニュースを耳にした。
その夫婦には幼い息子がいて、彼が逃げ出したらしい。
そして、彼は私の方を見てこう叫んだ。
「おじさん、あの家の人が悪い!」
その言葉は私を凍りつかせた。
私は何もできなかった。
その声は、私が恐れていた何かの象徴だったのだ。
結局、何も助けられなかった自分が、深い罪悪感に苛まれることになるとは思ってもみなかった。
その後、私はあの夜のことを思い出すたびに、冷たい汗が流れるのを感じる。
あのドンドンという音が、今も耳に残っている。
あれは、絶対に普通の訪問者ではなかった。
何かが私を見ていたのだ。
そして、私はそのことを忘れないだろう。
私の無力さが、あの子を救えなかったのだから。
その日以来、私は夜になると、あの音が再び聞こえてこないかと、ビクビクしながら過ごしている。
その音が、もう一度、私を呼んでいるのではないかと。
あの子が私を見つめる目が、今でも忘れられない。
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